2014年7月24日木曜日

温泉へ行こう。完結

昨日からのつづき。

二人は起きると朝一に黙って岩風呂へ。これぞ温泉宿。

思う存分に湯を楽しんだ後、ゆっくりと朝食。普通の日本食を頼んだが、さすがにアジのひらきとかは出てこない。庶民の味を口にするのがここの国では一番難しい。逆にそこそこ高級なものは口に入る。それなりに価値のあるものしか輸入がされないという事だ。ああいうものを求めてしまうのが贅沢という事になるのか。

夜の間一降りしたのだろう。バイク達も路面も濡れている。チェックアウトをした10時、我らは来た道を戻り始める。まだ朝っぽい光の中の森は艶がある。このしっとり感をα波とでもいうのだろうか。バイクを乗りながらの森林浴を楽しめる。


小気味良くワインディングを走って来ると奇怪な岩がやたらとある場所がある。Frog Hillと呼ばれているところだ。なぜか緩めの丘の上には所々に変な形の岩がある。NZには似たようなところが他にもいくつかあるが Lord of the Rings を始め、実にたくさんの映画やCMが撮られている。

そういえば、特にこの辺りの夏はほとんどの芝がこのように日に焼けてしまっていて薄茶色になってしまう。またそれもなかなかコントラストが付いて悪くもないのだが。緑の場所は放牧されているところでちゃんと水まきがされているところだけだ。この地域では緑の美しい丘は初夏にしか見られない。

クライストチャーチに戻って来た。まだ時間が早い。2時間で着いてしまうのでしょうがない。これまた嬉しいおいしくてボリュームのある日本食屋でランチを取り、たらたらと歩いて町見学などしてしまった。

その前の年の2010年9月にもあった地震の跡が残っていて、古いビルなどは梁を作って修理中だった所も少なくなかったのだが、、、この楽しかった3週間後に更にでかいのが来て壊滅状態になった。何とも悲しい出来事だ。

ちなみに3年経った今、完全復興まではまだまだ当分先の事であるように誰もが感じるくらい、見た目では進んでいない。ほんのごく一部だけが違う形で出来上がりつつあり、住民は一生懸命に明るく働いていて、そんなに支障もなく過ごしているように見えるが、きっとあれ以来、何かが大きく変わっているはずだ。



さて、3泊かな?と出てきたこの旅だったが、天気予報を見ると次の日がヤバそうだ。あと500kmなので帰ってしまおうという事になった。大丈夫、日はまだまだ高い夏の日。

クライストチャーチを南に下り始めAshburton(アッシュバートン)に向かう。だいたい1時間で着くその距離100キロ。SH1号線。これが退屈なくらい長いストレート。とは言え複線で交通量はあるし、うかうかしていられない。なんせ、ここは全行程中、一番スピードが出る所なのだ。そう、不思議な事に交通量が増えると速度を周りと合わせる為なのか、競争心をくすぐる為なのか、孤立して走っているときよりも平均速度が速くなるのだ。全く変な話である。

ここの木陰で一休み。満腹で眠たくなったとKuzzyさん。ずっといつかの為にと取っておいたRED BULLの濃縮タンクを差し上げる。ググッと飲み干したあと、水を追っかけで薄めて飲んでいる。

そこからはSH8に右に折れ内陸を走り始める。ここからは太陽の傾きもだんだんとドラマチックな影を作り始める時間になる。



Fairlie(フェアリー)の辺りはとても嬉しいワインディングだ。カーブがひとつひとつ美しい。楽しくなる道なのだ。牧歌的な景色が心を癒してくれる。



それが終わると今度は両脇が無くなる感覚なくらい広い所に道が一本走ってる。自由になって走れる感じだ。夕焼けまでにはまだまだ時間もある。Tekapo(テカポ)という、小さな町でまた日本食で夕飯とする。





Kuzzyさんの行きつけの店で、顔が利く。さすが、メニューに無いもの注文してるし。それに私も乗っかった。ちなみにこの近くを流れる淡水の水路でサーモンを養殖していて、それが名産である、が、今回はカツ丼。

またまた食に満足した二人は夕焼けになりつつあるその風景の中、ひたすら西に走り続けた。

サーモンの養殖場がある水路脇は不思議な絵になる。

 遥か向こうに国内最高峰のMt Cook(マウント・クック)が見える。

こんな時間にこんな所にいて、まだまだこの先3時間ほどあるのだが。しかし、この感覚、たまらない。何とも言えぬ、いーい時間帯である。


そして、いくら日が長いと言っても、Queenstownまでの家路の最後の1時間は川沿いのワインディングを含む、まっ暗闇の中を走る事になった。か細い私のバイクのヘッドライトではスモークのかかっているバイザーとではいかにも効率が悪く、Kuzzyさんに先導してもらう。新しいバイクのヘッドライトは明るくていいな。

しかし、そんなヘッドライトに吸い寄せられる蛾がたちまちバイザーに次々と打ち当たる。スモークだからとちょっと開けて視界を確保しようか、なんて思うが、それじゃ目に蛾が入ってしまい、危険度が増すかもしれない。第一気持ちがよくない。

そんな事を考えてると、ちょうど視界のど真ん中に大きめの蛾が当たり、視界の殆どを塞いでしまった。それに対して「うぉーッ」と口を大きく開けて叫んだらヘルメットのあごひもがあごによって下に引っぱられ、ヘルメットがちょっとだけ下にずれて視界を得る事ができた。思いがけない発見をした。

それからはずっと口を大きく開けて走る事になった。とても口の中が渇いた夜になった。この頃はまだインターコムを使っておらず、この珍事の実況中継をKuzzyさんにできなかったことが悔やまれる。


教訓:夏の夜は喉が渇く。

おしまい。

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