2015年4月26日日曜日

昇天した。

2015年4月下旬。

こちらは秋である。
広葉樹が多いこの辺りは紅葉でも有名だ。Arrowtownがその密集度と町の建物の雰囲気とのコラボで一番有名ではあるが、紅葉は近郊50kmくらいに広がっていてQueenstownやCromwellでもあちこちに美しい紅葉が見られる。

最近特に冷え込んでいた日々が続いて、2週間前には雪まで降る始末、秋を通り越して一気に冬になってしまったかと思われていたが、久々に陽気が差して風もない。行くしかない!

早速Kuzzyさんを誘うと2つ返事で乗ってきた。ランチを終えてから集合する。
出かける30分ほど前、我が家のリビングから見えるこれから出かける湖の方を見ると物凄く深い霧が湖の上空50mくらいを覆っている。その上は快晴でなんともいい景色なのにだ。

その霧のスピードはとても速く、みるみるとこちらの方角へ迫ってくる。これでは出かけられないのではないかと思うほどだったが、気温が上がる方が早かったのか、近ずくに連れてどんどん消えていった。

その話をインターコムでKuzzyさんにしながら進んでいった。
さすがに4月の下旬ともなれば気温は下がるが、町のホテルの看板についている温度計は11度を指していた。直射日光が当たっていればめちゃくちゃ暑いが、バイクに乗るとそういうわけではない。袖口から入ってくるのはやっぱり冷たい風だ。

Wakatipu (ワカティプ)湖はQueenstownの町を通り過ぎてしばらく行くと直角に曲がっているのだが、そこに着いたらいつもの風景が違った。左手に見える湖の上には先ほど見た深い霧が覆っていて、湖面が全く見えない。こちらの方角はまだ空気が冷たいのだろう。

早速滅多に行かない駐車場を見つけてハーレーを停めた。


二人とも呆気にとられ、しばらく感動の声をあげて見ていたが、ここは視界が狭くてよく見えるところではないので、もっとさきに行ってみようと再度エンジン始動して走り始めると霧はだんだん上昇してきた。我々のいた場所はこのGlenorchyに続く道では割と高い位置になるがどんどんこちらに向かってくる。我らは雲の中に突入した。

ヘルメットのシールドが湿り始め、空気が一段とひんやりしたが、ほんの一瞬であった。我らは雲を突き抜けて行ったのだった。左手眼下には雲が見えるが湖は見えないという不思議な景色だった。まるで飛行機から見ている風景だ。

所々、雲が異様に青い。湖の色が雲の薄いところを突き抜けてくるのか、雲の形が都合よく反射させているのだろうか、とか、気象博士になった二人は興奮していた。

そしていつも止まる展望台、Bennets Bluff(ベネッツ・ブラフ)に着くと真っ白な風景で何も見えないほどだった。雲は眼下を覆うだけでなく我々の視界を襲うように下から吹き上がってきた。

それでもしばらくぼーっとそこにいると風が吹いてどんどん霧が飛んでいくのがわかった。西の方からだんだんとあったかい空気が押している。その境が上から見ていて非常に面白かった。その風景を楽しむようにベルバードが目の前の木に止まり美しい声でさえずっている。私は興奮してシャッターを押した。



 とてもいいものが見られたと、二人は満喫してまたハーレーにまたがった。Kuzzyさんもこのような現象を見たのは初めてだと言っていた。もちろん私も初めてである。

霧が去った後の湖は非常に静かで湖面が鏡になっているようだった。ずっと左に顔を向けてGlenorchyまで走った気がする。美しいものを見ることには飽きないということが分かった。

「美しい日」はたとえ大都会でもどこにいてもそう感じることがあるが、その時に美しい景色にいるとその美しさは相乗効果をもたらしてさらに美しいものになる。美しいものをもつものの特権と言えるのではないだろうか。美しいものを美しい環境で見るということは素晴らしい体験になるということだ。

いつものカフェに腰を下ろすとランチタイムの後のロングウィークエンド前のウィークデーのせいもあってか、客は私達だけであった。いつもは空いてる席を探すのだが、今回はどこに座ろうかとたくさんあるテーブルで迷う我々だった。


陽気はいよいよ非常によく、サンスクリーンが必要なんじゃないかと思うくらい顔の表面がじりじりした感じがするほどだった。
しかしながらシーズンは後一ヶ月。これから一気に冷え込んで行くのだなあと思うと悲しいものがある。




Glenorchyも木々は黄色くなっていた。
もうしばらくあったかい晴れが続いてくれればもっと走れるのに。




2015年4月6日月曜日

バイクの整列方法。

2015年4月。

もうあと一息で今シーズンが終わってしまう。ほんのり木々が黄色くなり始めている。日本とは正反対の季節である。秋だ。

ここのところ、しばらく一緒に走っていなかったKuzzyさんからお誘いが来た。昨日ほのめかしておいたからだ。あと30分後だ。ランチをまだ食べていない。昨晩にサマータイムが終わり深夜に1時間伸びたのでどうも時間がしっくりこない。おまけに昨晩は月蝕だったので真っ赤な月を見た。

一つだけ残っていたラ王の塩味を見つけ、子供たちが周りで騒いでいるのをそのままに速攻で作ってあっついラーメンを掻き込んだ。貴重なラ王をこんな扱いにしていいものかと自問自答しながらスープを1割ほど飲んだ時、Kuzzyさんはやってきた。

残ったスープを偉そうに子供たちに「飲みたいだろ、分けてあげよう」と家を出た。うーん、惜しいことをした。ま、彼らはちゃんとこれからママが美味しいランチを作ってくれるだろう。

まずガソリンスタンドに行こうとそちらへ向かうとちょうど1台のハーレーが出てきた。
今はイースターで巷は4連休。きっとバイクが多いだろう。子供たちの学校も2週間も休み、秋休みである。ハイカーも多いがパトカーも多い。ガソリンスタンドにもパトカーが止まっていた。ランチの買い物だろうか。結構私用?でパトカーは使われていることもある。パトロール中にだっておなかは減るのだ。マックに嬉しそうに入っていくお巡りさん達も見たことがある。

さて、行き先を決めていない。スタンドで南に行こうか東に行こうかと空を見て風の動きを見る。西は雲が出つつあるのでとりあえず東に向かうことにした。1時間の距離にあるTarrasという小さな小さな村に生かしたカフェがあるのだ。


さすがに車が多い。びっちり並んでいる。それでもしばらく行くとワイナリーの横にある長い直線が続き車間が開いてきて割と軽快に流れるようになった。しかしながらペースはやはりちょっと遅めだが、心地よく走れた。

ふと前方の反対車線の路側帯から出てきてUターンをした車が我らの2台前方に合流した。パトカーだった。おそらく反対車線に止まっているトラックは何かで切符を切られてしまったのだろう。今日は稼ぎどきに違いない、とか、そんな会話をKuzzyさんとしながら気をつけようねと前に進んだ。インターコムは便利で退屈しない。

するとパトカーと私たちの間にいた車がいなくなりもろにパトカーに付いていく形となり道は渓谷地帯に入った。ここの入り口には追い抜き車線があって、大概ここで前方にいる車をすっこ抜きするのだが、今日は目の前にパトカーがいるのでおとなし〜く走ることに決定。周りの車も全く追い抜きしない。ゆったりと流れるエメラルド色の川に沿って走る。今日はゆっくりめなのでよーく見える。

チラホラと黄色くなった葉っぱが多いところと、まだのところと現れているが、おそらくあと2週間でガラッと雰囲気が変わり、真っ黄色の世界になるだろう。そしてそれは3週間くらい続く。なので日本のゴールデンウィーク辺りでもまだ紅葉が見られると思う。それを見に来る観光客もまた多くなるだろう。

渓谷を抜ける直前にもう一つの追い越し車線が長くある。パトカーの前に数台車が詰まってきていてずっと90キロ弱で走っていた。ここで追い抜きしようかどうしようかとKuzzyさんと相談するのだが、乗り気でなさそうなのでここでもじっとした。ちょっとでも100キロを超えてしまうようなことがあればここは渓谷だけど警告だけでは済まされない。

そんな渓谷を抜け、果物の産地Cromwellに着くと急に空気が冷たくなった。山脈を超えたからだろう、天気が違う。まだ日は刺すが全体をぼんやりと雲が覆い始め、空気が冷たくなった。どうやら私は少々薄着で出てきてしまったようだ。夏とほぼ同じ、革ジャンの下には長短Tシャツの2枚である。さみーっと喚きながら走り続けた。


Tarrasに着くと何台か見覚えのあるバイクが停まっていた。たまに一緒に走っているクラブの連中だった。みんな走るのが好きなんだなあと実感。でもチョイ乗りで行ける範囲と道の数が限られているので会う確率が高い。

来た道はちょっと違ったがほとんど付いた時間は一緒だったので、コーヒーブレイクを一緒にして、これから一緒に走ることにした。

みんな綺麗にバイクを停めるのは得意じゃない。

XR乗りのいっかしたゲキっ速の女性がいるのだが、今回彼女はMT09に乗っていた。XRがツーリング中に壊れてしまったという。旅の途中だったので2日間はタンデムで我慢したけどそれ以上我慢できなくて買ってしまったという、すごいニュースだったが相変わらず走る速度は変わってない。いい買い物をしたのではないだろうか。

この団体の中では一番の知り合いもCB1000からCB1300に乗り換えていた。私からの見た目は何一つ変わってないように見えたのだが。彼もハッピーであった。

よく見たら、今日出がけに見たガソリンスタンドから出てきたハーレーDynaはここにいた。どうやらみんなと一緒だったのだ。我々はおそらく10分くらい遅れて来ていたということだ。


一行はWanaka方向に走り出した。総勢8台だ。ハーレー3台、BMW3台、ヤマハ1台、ホンダ1台だ。こっちの方向はますます寒い。
そんなことを思っていたらちょうど妻からの電話が鳴る。なんでもうちの方は天気も良くあったかいという。ちょっぴり後悔。

Cardronaには歴史的に有名なバーがある。ローカルの人間はここで一杯やっていくのがお気に入りなのだが、今日のこの気温では私は遠慮したい気持ちだった。ちょっと遅れて着くと今度は綺麗に並んでいたので最後尾に並ぶ。


ところがどうしたことがみんながゾロゾロと出てくるではないか。なんでも満席でサーブできないというのが理由で追い返されたらしい。私とKuzzyさんはほっとした。でもトイレへ行ってもっとホッとしたかったのが、みんな出発するというのでそのまま出発した。帰りはざっと40分というところか。

峠を走る。ガンガン登ってガンガン下るのだ。前方のグループはみんなあっという間にいなくなってしまった。みんな私より年上だと思うのだが、ガンガンと大人気なく行ってしまう。

この峠は国道で最高地点を走るものなのだ。そしてここがサミット。町の高さがだいたい330mなので700m弱も上がってくるのだ。なるほど、勾配がきついわけだ。



頂上に着いたKuzzyさんを捉えた上空には人生で今まで見たこともない雲が空一面を覆っていた。
それから我らはトイレトイレと念仏を唱えるようにして家路を急いだのだった。