2017年2月。
やっぱり天気がいい日にはブラっと出てしまう。
相棒は今日ももちろんKuzzyさんだ。
家が2分と離れていないのは偶然なんだが本当に便利。
声かけてすぐに出られる。
二人とも暇であるのだ。
さて、いきなりもうコーヒータイムの時から始まる。ここはGlenorchy (グレノーキー)だ。Queenstown (クイーンズタウン)の家から片道ざっと45分くらいだ。60kmの距離。
いつもの美味しいコーヒーをいただきながらいつものようなおしゃべりをすると時間が流れるのがものすごく早い。天気がいいとまるで自分が健康でいい人になった気分になるから勝手である。
とってもいい時間をこのガーデンカフェでたっぷりと過ごすと、さぞ満足したように我々はすぐ横に停めた2台のスポーツスターを始動する。
ちょっと写真を撮る用があったので、私は村を出てすぐにある高級旅館の横の牧場地に停めた。ここはセレブが泊まるようなところ。ハリウッド俳優なども泊まることもあるという噂だが、おそらく本当だと思う。そういえば牧場には今日は羊がいなかったな。
あちこち写真を撮っていて、ふと気がつくとKuzzyさんが私のにまたがっている。そしてこう言った。
「前にお前に言われたことがすごく気になっててさー、俺のに比べるとスクーターに乗ってるようだって言ってたじゃん。」と。
そう、私のは2007年式1200 CustomでKuzzyさんのは2012年式883 Lowなのだ。
私が買ったのが1年先で、其れに慣れていた私はKuzzyさんの883を初めて乗った時に感じたことは、ローパワーで静かで走りも滑らかだ、というものだったのだ。其れを形容してまるでスクーターのようだ、と言ったものだった。
ちなみに私のはドノーマルだが、マフラーに穴が開けられているらしく(前のオーナーの仕業)とても音が大きいのだ。しかもとってもいい音ではあるのだが。
あまりにも乗り比べしたそうだったので、いいよと言うと、すぐさま目の前の道へ飛び出て行った。帰ってくるとヘルメットの中の顔が上気しているのがわかった。
今まで愛着のあったはずのものに時間の経過とともに新鮮さが失われ、他を見始めてしまうのである。浮気はするとなかなか止められないものである。
Kuzzyさんはその道のエキスパートであるので、車も何台も買い換え、所有し、バイクも数台抱えている。一夫多妻制の暮らしを平気でしているような人である。
その熱意に応えるべく、私は帰りの道のり全て走り抜ける権利をKuzzyさんに与えてあげた。
ヘルメットの下のKuzzyさんのホクホク顔を想像しながらインカムでの会話では、続々と好感の感想が並べられた。
きっとこれがKuzzyさんが大きいのに乗り換えるきっかけになるだろうと思った。
私は普段見ることのない自分のスポーツスターを後ろから見ながら追っかけることに。普段は私が先頭なのだが、なぜかこの時はずっと後ろ。
そうして見る私のスポスタの後ろ姿はなるほどセクシーだなと思った。背も高く、割とすらっとしていて、サドルバッグの革のフラップの端がちょっとヒラヒラして、まるでスカートを揺らして走る姿のようではないか。
そして883Lowにまたがって追っかけると乗車姿勢が低いのでそのスカートを覗くように走ることになる。
Kuzzyさんの心に火をつけてしまったのもしょうがないとその視界から私は判断をした。
きっと本気になってしまうだろう。