帰る日。
ここはMethven (メスベン)カタカナで書くとなんか変な町の名前だ。とてもちっちゃいしすごい田舎。畑ばかりが永遠と四方八方に広がっている。麦やコーンやアブラナや色々だ。
家の窓の向こうに見えるのはこの町の唯一のゼニバコMt Hutt (マウントハット) スキー場があるが、もちろん冬の間しか、人はいない。ここの家主が家を建てたばかりの頃、もっとよく見えていた山だったが、隣人の防風林が大きく育ってきて、その山を半分隠してしまい景色を変えてしまったと嘆いていた。山が見えるからここに住むと決めたのにと。
あの木がもっと高くなって安全といえなくなる時が来たら切られるよと彼女を慰めた。風が超強い所でもあるので、その前に自然に倒れるかもしれない。
その時が来た時の彼女の嬉しそうな笑顔を想像した。
目覚めはスッキリだ。しかし実はまだ鼻が詰まっててなんとなく頭は重い。軽い風邪の症状だ。
私はここ半年以上、朝ごはんは取らないようにしていると伝えていたにもかかわらず、それを無視して作ってくれる。Kuzzyさんは喜んで貪ってた。コーヒーマシーンで入れてくれたロングブラックが体に滲みる。
いざ出発。
奥さんに別れを告げると3人の子供達も出てきて手を振ってくれる。一番下の女の子はまだ小さいが一番の目立ちたがり屋。誰に似たのだろうか。旦那は仕事で留守中でも、奥さんがちゃんとおもてなししてくれるということに感謝した。
さて、早速道に迷う。朝だけに、太陽がまだ低いところにあるのであちらが東だとはわかるのだが。まっすぐな道をとりあえず東に向かう。ずっとずっと不安になるくらい真っ直ぐだ。するといきなり、鳥がどこからともなく飛んできて、私のブーツを履いた右足のくるぶしくらいに当たり、エンジンとの隙間を抜けていった。インターコムで話し中だった我々だったが、私の悲鳴に驚いたようだった。
だいぶ後ろを離れて付いてくるKuzzyさんが見た時にはその鳥が道路でくたばっていたらしい。まあ、しょうがない。
何度も来ているので、かすかに憶えていた交差点を右に曲がる。おー、ここだ、ここだと。直角に近いコーナーを右に曲がると全開に近いくらいの加速でペースに乗る。と、とたん、また、鳥の大群が目の前を急によぎり、それを避けようと両足をグッと上げたら右足の靴底に、ゴンッと当たった。なんという確率だろうか。いわゆるライダーキックをしてしまい、鳥をまたもや倒してしまった様子だ。
先ほどの事故現場から今の事故現場まで2分と離れていないのにだ。びっくりである。それにしても鳥たちはどうして100キロで走る物体の直前をあえて横切ったりするのだろうか。
もし私が鳥ならそんなことはしないと思うが。
無我夢中でひた走る。天気は良い。結局、昨日の峠を越えてからMethvenに着くまでが悪かっただけで、あとはずっと天気が良い。素晴らしいツーリング日和である。
Tekapo(テカポ)までは2時間くらいあったのだが、あっという間に着いた気がした。人気の日本食のレストラン、ランチの予約をしていてよかった。たった二人だけども、最近は入れないときもある。以前は一人でも入れなかったほどだ。テカポには店が足りない。
いつもの納豆サーモン丼を食べた後、お勧め上手のお姉さん店員から聞いた驚きのたった$3の手作りクッキー付き抹茶アイスクリームを別腹に入れ超満足した我々はまた走り出す。
最高峰のMtCook (マウントクック) が目の前に見えるプカキ湖に着くとぼんやりと晴れていた。
レンタルカーが非常に多い。みんな景色のいいそこかしこで急ブレーキを踏む。風物詩みたいなものだ。でもそれが数ヶ月続くのだが。
Omarama(オマラマ)ではいつものカフェによりまたコーヒーブレイク。なんか好きなのだ、ここは。店員にも名前まで憶えられている。以前仕事でこのちっぽけな村に滞在が長かったことがあるからだのだが、でも実は、彼らのビジネスは最近日本の観光ツアー会社と密接になっているということも関係しているのだろう。カフェにくっついた服屋では数人の日本人が雇われている。カフェで働くここのオーナーの娘も日本に留学生で行ったことがあるらしく、とても好感を持っているそうだ。
日本を嫌われないようにしないと、と私もわずかながら彼らの前では背筋を伸ばしてしまったりする。
もう、ここまで来るとなんとなく庭を走っている感覚になる。確かに2時間はあるのだが、コーナーのの一つ一つを覚えているとまでは言わないが、見慣れている風景だ。きっともっともっと時間をかけて走っていけば、新発見もあるのかもしれないが。脇道もそれてしまえば、まだ未知の世界だが、ほとんどは砂利道なのでハーレーで入ることはない。
この2時間の道のりは過去二日間の感想と反省と思い出と、ずっとずっと走りながら家路に着いた。天気に恵まれ、カフェではいろんな目にあい、人と出会い、美味しい食事にありつき、何しろ無事に帰ってきた。それぞれの家族が待つ家に。
実際のところ、彼らは別に待ってた訳ではいなかったようだが。
また行こう、と思った。
2016年2月9日火曜日
2015年2月27日金曜日
晴れ三昧の幸福日和? ツーリング初日。
2015年2月。
いざ出発である。
この夏、この時期にしてようやくロングツーリングができそうな時間ができた。天気予報を見ると今日明日は晴れで、うまいこと2日目の夜に雨が通り、3日目の走りには影響がなさそうだ。
Arthur's Pass(アーサーズ・パス) という峠が南島のほぼ真ん中を北西から南東にかけて貫通しているのだが、この道だけハーレーで抜けたことがなく、今回はここを通ることを目的とした。
出発前日に打電して新たなハーレー乗りになったMethven (メスベン)に住む友人RとTekapo (テカポ)でランチの為に1時頃に現地集合することにした。クイーンズタウンからは大体3時間、メスベンからは大体2時間弱の 距離。ちなみにRはまだ航続で100kmも走ったことがないという。彼にとっては初ツーリングみたいなものだ。これは楽しいイベントになりそうだ。
この時期、ホリデーなので、交通量が非常に多い。しかも海外旅行客のレンタカーが半分を占めているんじゃないかと気がするほど多い。ホリデー時の事故が多いのも当たり前である。特に中国、インドからやってくる人々の運転は非常に迷惑で恐怖であるので、本当に気をつけなくてはならない。モラルや交通ルールを守れないという問題だけではなく、人によっては車の動かし方自体が怪しく、左車線に留まれなかったり、ハイスピードに慣れていなかったりと、そもそもの問題であるから怖い。
何台もそんな車を前に後ろに対向車に見ながらクイーンズタウン近郊を抜ける。珍しくワイン畑で一枚。まだぶどうの身は小さいようだ。
やっぱりハーレーはマフラーが見えるのでこちら側のアングルが好きだ。
超ゆっくり下山してくるRをしばらく待ってから一緒に走り出すことすぐ、私の右腕に激痛が走った。前に覚えのある痛さだ。また蜂に刺された。この時期、蜂は活発に動き、しかも量が半端じゃない。確かに私の上下の革にはたくさんの蜂が当たった跡がある。袖口から入る確率を考えれば低いはずなのだが、ハンドル位置と角度でちょうど袖が正面を向いているとは言え、全く良く入るものだ。宝くじもこのくらい当たると良いのだが。
みるみる腫れてきたので、Rを置きざりにして、痛い右手でスロットルとブレーキをコントロールしながらテカポの町まですっ飛んで戻り、お土産屋に飛び込んだ。薬局などないのだ、この小さな町は。そこで手に入れたのが、プロポリスの原液。
これをたらっと一滴すると治りが早いと言われている。元々蜂が集めたものなので、毒を以て毒を制するというアイディアからきているのかもしれない。
その後、痛さは治まり痒さに変わって熱をずっと持ち続けた。その晩は腕をかきかきしながらRのシェフである奥さんの作ってくれた美味しいご飯をいただいた。
全体的に観れば幸せな日であったがその幸せぶりに”バチが当たった”のだろうか。
つづく。
いざ出発である。
この夏、この時期にしてようやくロングツーリングができそうな時間ができた。天気予報を見ると今日明日は晴れで、うまいこと2日目の夜に雨が通り、3日目の走りには影響がなさそうだ。
Arthur's Pass(アーサーズ・パス) という峠が南島のほぼ真ん中を北西から南東にかけて貫通しているのだが、この道だけハーレーで抜けたことがなく、今回はここを通ることを目的とした。
出発前日に打電して新たなハーレー乗りになったMethven (メスベン)に住む友人RとTekapo (テカポ)でランチの為に1時頃に現地集合することにした。クイーンズタウンからは大体3時間、メスベンからは大体2時間弱の 距離。ちなみにRはまだ航続で100kmも走ったことがないという。彼にとっては初ツーリングみたいなものだ。これは楽しいイベントになりそうだ。
この時期、ホリデーなので、交通量が非常に多い。しかも海外旅行客のレンタカーが半分を占めているんじゃないかと気がするほど多い。ホリデー時の事故が多いのも当たり前である。特に中国、インドからやってくる人々の運転は非常に迷惑で恐怖であるので、本当に気をつけなくてはならない。モラルや交通ルールを守れないという問題だけではなく、人によっては車の動かし方自体が怪しく、左車線に留まれなかったり、ハイスピードに慣れていなかったりと、そもそもの問題であるから怖い。
何台もそんな車を前に後ろに対向車に見ながらクイーンズタウン近郊を抜ける。珍しくワイン畑で一枚。まだぶどうの身は小さいようだ。
しばらく行くと10台くらいの車の一団がいた。先頭車両が遅いのだがその後に付いている2台目、3台目も技量がないのか、抜けないでいるのだが車間が詰まっていて、抜く気満々のその後ろの車達が抜けないでいる。そうなると全体のスピードは先頭車両の速さで決まってしまう。法定速度では100km/hなのだが、大抵そういう車は80km/hそこそこで走っている。このまま1時間も走り続けられたら20kmも距離が違うのだ。本日400km走る予定の私は付き合いきれない。第一、ランチタイムが終わってしまうかもしれないではないか。
広い所で一挙にごぼう抜きしていくことができるのはバイクならでは。車の長さと幅ではこうは出来ない。やっと普通の巡行に移ることができてしばらくすると写真タイムだ。Lindis Pass (リンディス・パス)という峠だ。観光スポットになっていて、近年できた見晴台まであるが、そこを通り越して下から眺めることにした。でも写真は下向きに撮ってみた。
そして撮ってる間にさっき抜いた一行に抜かれてしまった。
ここを抜けると今度は真っ平らまっすぐな道がグーンとOmarama (オマラマ)
まで続くのである。車の一行の車間も順序もまちまちになってくることだろう。
私は見晴らしのいいストレートを走るとき、時々周りの景色に圧倒されてスロットルを緩めて進むことがある。80km/hくらいで流すとエンジンの鼓動がゆったりとなり、とても心地よいのだ。いわゆる昇天している感じと言えばいいのだろうか。
先ほどまでブチ抜いてきた車たちが不思議な顔して私の横を追い越していく。
ということで、また一枚。大乾燥地帯がやっぱり乾燥していた。
実はシーズン初めはなんとこの土地が芝生で真緑だったのだ。目を疑ったくらい信じられなかった。こんなところでそんなことは可能なのだろうかと思ったものだ。が、やっぱり元の茶色に戻っていた。緑は美しいが、この茶色の風景に見慣れてしまっていて、緑だと違和感がある。
大快晴に恵まれて最高峰のMt Cook (マウント・クック)も絶好調に光ってた。手前のブルーグリーンのLake Pukaki (レイク・プカキ)もすごい色を放ってた。
テカポのほんの一息手前の荒涼としたところもなぜか好きだ。なんもない大地に道路と平行に点々と電信柱が立っている。あの電信柱の切なさが好きなのかもしれない。悪天候にもめげずに立っているのだ、何も言わずに。昔見た日本のCMであった三丁目の電柱の歌を思い出した。
やっぱりハーレーはマフラーが見えるのでこちら側のアングルが好きだ。
予定より25分くらい遅れて(勝手に私はもともと遅れる予定にしていた)テカポに到着、友人Rもちょうど着いたばかりだと言ってくれた。10分くらいの差だったと思う。
久々の再会でテカポ名物サーモン丼を頬張りながらお互いの近況報告をする。ネットの力で離れていても結構お互いの近況を知っているものである。実際に会ったときはその詳細について聞くという会話の方向に時代は変わりつつあると感じる。
天気も最高だし、折角なので、近くの天文台があるMt John (マウント・ジョン) に登ることにする。もちろんバイクで。舗装路だけど、道が狭く急な坂でヘアピンも多いので、Rは躊躇したけども、もし一人だったら行かないだろうということもあり、行くことにした。
Rはそこそこ苦労しながらもちゃんと登ってきた。その見返りは素晴らしい景色だった。
初ツーリング記念にRの勇姿も撮って土産とした。
撮影のためにRはこの狭い道でUターンをしてきたのだが、おぼつかないその姿を遠く離れて見ていてもひどく滑稽だった。シート幅が私のと比べて広く、跨ると彼の背では両つま先ツンツン立ちなので、まだしょうがない。そのうち慣れてくるでしょう。
みるみる腫れてきたので、Rを置きざりにして、痛い右手でスロットルとブレーキをコントロールしながらテカポの町まですっ飛んで戻り、お土産屋に飛び込んだ。薬局などないのだ、この小さな町は。そこで手に入れたのが、プロポリスの原液。
これをたらっと一滴すると治りが早いと言われている。元々蜂が集めたものなので、毒を以て毒を制するというアイディアからきているのかもしれない。
全体的に観れば幸せな日であったがその幸せぶりに”バチが当たった”のだろうか。
つづく。
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2014年8月21日木曜日
もうすぐ走り出す準備
今回の写真は全て2012年の5月。
冬に突入する直前のちょい乗りだ。ほぼ走り納めの時の事だ。
Kuzzyさんを誘って走った。いつものGlenorchy (グレノーキー)だ。
もちろん天気がよくなければ外に出る訳が無いこの二人なのでこの日は晴れ。空気はパキンとしている。太陽が当たっていて動かなければ寒くはなかったが、バイクともなるとそうはいかない。二人とも革ジャンを捨て、完全防備のナイロン製のジャケットに身を包んで出かけた。
このジャケットとパンツ、NZでは出回る商品が少ないので選べる程ブランドも無い。従ってルートは違ったが入手したものが同じ商品である事が発覚した。
全く二人して兄弟みたいである。良く言えば?ペアルック、もしくはユニフォームなのだ。バイク乗りが何人も集まれば、きっともっと多くなるだろう。
全く二人して兄弟みたいである。良く言えば?ペアルック、もしくはユニフォームなのだ。バイク乗りが何人も集まれば、きっともっと多くなるだろう。
REV'IT!というメーカーで確かに作りは良くってインナーが付けられる様になっていて、付けるとぽかぽかとあったかい。パッドも肩、肘、膝と着いているので普段来ている何も付いていない革よりも安全性は高い気がする。しかし、ハーレーとは見た目が釣り合わないのがしょうがない。
このジェケットパンツを買ったのはハーレーを買った日だった。安いナイロンのブーツも一緒に買った。うちから300km 離れたDunedin (ダニーデン)にある店で買ったのだからしょうがない。雨が降っていたのだ。
初日に雨とは、とほほな気分だが、買った嬉しさは隠せなかった。ここからOamaru (オアマル)の友人宅まで走るのが初めての日の走行になった。
雨の中、初めて乗るHarleyは不安だったが、新品の全天候型ジャケットは見事に体の熱を逃さずドライ状態を守ってくれた。早速テストができたと思えば悪いもんでもないとポジティブに考えることにした。
翌日は更に北上し、Christchurch (クライストチャーチ) まで行くのだが、また雨だった。今日も雨テストができる!! 昼にはミーティングがあるのでしょうがない、行かねばならない。
しばらく走って隣町が近くなると、いつの間にかバックミラーに写るもう一台のハーレーがいた。カバンをたすきがけにした大学生みたいな雰囲気で、カッパどころか、普通の薄っちいジャケットにジーンズしか着ていなくてずぶぬれになっていた。本物のハーレー乗りはこういうものなのか、すごいなあ、と感動した。彼はあっという間に私を抜き去り、近くの家に曲がって入って行った。ちょい乗りに出かけていたのだろうか?
途中、初めての給油をした。Timaru (ティマル)に着いた時のことだ。進行方向に対してバイクをパンプの右側に止めてしまうとスタンドを出した時のバイクの傾きは当たり前だがパンプ側と反対になってしまう。まあ問題ないと、パンプとバイクの間に立ち、ノズルを手に注ごうとすると意外にこれがやりにくい事に気がついた。タンクキャップを開けると更にしきりがあって、そこに狭い穴がちょこっと開いている。(ディーゼルを間違えていれない様にかな?)背も低いのでその穴がよく見えない。
タンクにこぼれない様にと身を乗り出して丁寧にノズルを入れてホッとし、ハーレーから離れようとすると、右膝が離れない。見ると膝がエキパイに当たってて溶けているではないか!
剥がし取ると内膝には直径2センチ程の丸い穴ができてしまった。悔しいったらないのである。エキパイには溶けたナイロンがねちゃっと付いていた。
以来、給油の時はちゃんとバイクの左側に立つ様にしている。高いレッスンだった。今はその右膝には黒いガムテープが張られている。これを見る度、この苦い経験を思い出すのだ。
ちなみにその後、クライストチャーチをその翌日に出発したがやっぱり雨。Tekapo (テカポ) 辺りまでの250kmはずっと雨だった記憶がある。やっぱりツーリングは晴れに限る。
そのジャケットとパンツだが、基本、寒い時期にしか着ない。もしくは、ロングツーリングでヤバそうな予報が出ている時には着るのだが、暑い時はめちゃ暑いのだ。まあ、それは革でも一緒だが。今まで約3周南島を回ったが、2周はこれを着てたので、そこそこ活躍はしていると言える。
そして、あと10日で解禁日がやって来る。9月からは乗れるのだ。
やっぱり最初のうちはこれを着て乗るのだ。
やっぱり最初のうちはこれを着て乗るのだ。
ああ、待ち遠しい。
2014年8月12日火曜日
星空とエメラルドグリーン − 気ままにぐるりと2000km これで終わり
2012年2月。
ゆっくりとした朝だ。いつもゆっくりしているが、今日は特にもっとゆっくり。
実家が中華料理屋を営む彼の奥さんの手料理はすばらしいし、居心地が良すぎちゃうのだ。
彼らはこの後本格的に屋台のラーメン屋を開く事になった。生まれたばかりの3人目の赤ちゃんもいるのに、子供達も育てながらの開業とは、何とも凄いエナジー。
家族皆さんに見送られ、ハーレーおじさんは颯爽と去っていった。
しかし、このメスベン、(もちろん標識はあるのだが)余りに道路上に何の目印もなく非常に迷う。四方とも畑ばかりの角はみんな直角で、どこも同じ様に見える。ただ、北側に頑として座っているMt Huttだけを便りに進む。西に進めば大丈夫だと、先に行ってみると砂利道の農道になってしまったりした。
天気は結構にグレーな雲があって、冷たい風が体に当たる。低気圧なのか。昨日はあんなに天気がよかったのに、と残念ながら走る。Geraldine (ジェラルディーン)はそのまま通過、 Fairlie (フェアリー)ではガソリンを入れるだけで、無口のまま走る。一人なので当たり前だが。
フェアリーからTekapo (テカポ)までのちょうど半分の距離に、Burkes Pass (バークス・パス)という峠がある。緩やかに山あいを登って行って平野部が見えて来ると景色はがらっと変わった。この山脈の向こう側は澄み渡るブルーである。ようやく青空の下を走ると気温も上がる。
ふとバックミラーを見ると山側には大きな掛け布団が掛かっている様に見えた。その掛け布団の上空もきれいな青だ。こんなにも天気は違うものだと感心する。
その後すぐにテカポに着く。
この湖の色はほんとに美しい。晴れの日はバスクリンを入れたようなエメラルドグリーンだったりディープブルーだったりする。夕焼け時にはそれなりに染まる。初めて見た時は本当に感動した。ちなみに曇りの日はやっぱりグレーである。そしてこれもダムでせき止めてできた人工湖である。
実寸大の素敵な箱庭みたいなものだ。
ちょうどランチタイムでお気に入りの和食屋さんへ直行だ。全くいつもここばかりでレパートリーがないのかと言われそうだが、ホントにない。普通においしいピザを出すイタリアンがあるが中華はひどいと聞いたことがあって行った事がないでいる。仕事で泊まる事もあってモーテルに付随したレストランで取った朝食はとても嬉しくないしろものであった思い出がある。町で一番おいしいお店が日本食屋と言う事なだけなのだ。
このテカポ、何かと今、日本で話題に上がるのは星空ネタだ。先ほどの道程でも身を以て経験済みだが、晴天率が国内最高であり、光害も最小に押さえられ、世界からの観光客がこぞってツアーに参加したりするので日本の旅番組が次々と来るのも理解できる。
私は高校生の時(懐かしい!)天文部に在籍し夏の合宿では長野県の入笠山でペルセウス座流星群を追いかけた青春を送ったのだった。(お!! 奇しくもちょうど今夜が極大日(最大で最高)ではないかと、たった今、気がついた。)
確かにあの時見ていた星空とは比較にならない程、こちらの空は黒が濃く星々が明るい。もっとも北半球と南半球で見える星空は違うが、天の川がはっきりと見えるのは驚愕だ。
星空なので、Queenstownでも、もちろん同じものが見える。ただ町が明るいのでテカポと同じ条件くらいの星空を探すとなると山奥まで行かないといけないし、周りの山々が高くて空が狭いという事もある。しかし、最近は夜空を見上げる事もなくなってしまったなあ。
テカポを出発、水路脇を走る。(私道の為、現在通行止め?)あの水色のまんま、水路が流れて、そこで先ほど食べたようなおいしいサーモンが養殖されている。網のすぐ横で釣り糸を垂れている人が少なくない。その養殖場から漏れて来るエサで育つ魚やきっと破れた網の穴から抜け出した魚がいるらしく、それもまたものすごく肥えていて同じくおいしいらしいのだ。
それにしても、ちょっと、えげつなくないかい。釣りをしている彼らは数ヶ月は動かしていないキャンピングカーを川の脇に止めて生活しているかの様に見える。(上の写真は違うけど)
遠くに最高峰のMt Cook (マウント・クック)も見えるすばらしい釣り場である事は確かだ。
こんな所でつったばかりのサーモンを炙ったりしていただいたらそれは最高であろう。今度の夏に家族に提案してみよう、といつも思うのだが。
Omarama (オマラマ)で給油をするとレジで目の前に仕事仲間がいた。マオリのおじさんだがV8以外は車と認めないと言う人だ。100km/hで走行中はアイドリング近くでクルージングしているところがいいらしい。フルレストアが終わって車はぴっかぴかだけど財布はすってんてんと言っていた。
私の来た道をこれから行くと言う。お互いの安全を祈り別れを告げる。
ここまで来るとやっと帰ってきたなあと思う。あとたった200kmで家に着く。
全行程7日間の旅になった。自分の家族に会うのが楽しみだ。
2014年7月24日木曜日
温泉へ行こう。完結
思う存分に湯を楽しんだ後、ゆっくりと朝食。普通の日本食を頼んだが、さすがにアジのひらきとかは出てこない。庶民の味を口にするのがここの国では一番難しい。逆にそこそこ高級なものは口に入る。それなりに価値のあるものしか輸入がされないという事だ。ああいうものを求めてしまうのが贅沢という事になるのか。
夜の間一降りしたのだろう。バイク達も路面も濡れている。チェックアウトをした10時、我らは来た道を戻り始める。まだ朝っぽい光の中の森は艶がある。このしっとり感をα波とでもいうのだろうか。バイクを乗りながらの森林浴を楽しめる。
小気味良くワインディングを走って来ると奇怪な岩がやたらとある場所がある。Frog Hillと呼ばれているところだ。なぜか緩めの丘の上には所々に変な形の岩がある。NZには似たようなところが他にもいくつかあるが Lord of the Rings を始め、実にたくさんの映画やCMが撮られている。
そういえば、特にこの辺りの夏はほとんどの芝がこのように日に焼けてしまっていて薄茶色になってしまう。またそれもなかなかコントラストが付いて悪くもないのだが。緑の場所は放牧されているところでちゃんと水まきがされているところだけだ。この地域では緑の美しい丘は初夏にしか見られない。
クライストチャーチに戻って来た。まだ時間が早い。2時間で着いてしまうのでしょうがない。これまた嬉しいおいしくてボリュームのある日本食屋でランチを取り、たらたらと歩いて町見学などしてしまった。
その前の年の2010年9月にもあった地震の跡が残っていて、古いビルなどは梁を作って修理中だった所も少なくなかったのだが、、、この楽しかった3週間後に更にでかいのが来て壊滅状態になった。何とも悲しい出来事だ。
ちなみに3年経った今、完全復興まではまだまだ当分先の事であるように誰もが感じるくらい、見た目では進んでいない。ほんのごく一部だけが違う形で出来上がりつつあり、住民は一生懸命に明るく働いていて、そんなに支障もなく過ごしているように見えるが、きっとあれ以来、何かが大きく変わっているはずだ。
さて、3泊かな?と出てきたこの旅だったが、天気予報を見ると次の日がヤバそうだ。あと500kmなので帰ってしまおうという事になった。大丈夫、日はまだまだ高い夏の日。
クライストチャーチを南に下り始めAshburton(アッシュバートン)に向かう。だいたい1時間で着くその距離100キロ。SH1号線。これが退屈なくらい長いストレート。とは言え複線で交通量はあるし、うかうかしていられない。なんせ、ここは全行程中、一番スピードが出る所なのだ。そう、不思議な事に交通量が増えると速度を周りと合わせる為なのか、競争心をくすぐる為なのか、孤立して走っているときよりも平均速度が速くなるのだ。全く変な話である。
ここの木陰で一休み。満腹で眠たくなったとKuzzyさん。ずっといつかの為にと取っておいたRED BULLの濃縮タンクを差し上げる。ググッと飲み干したあと、水を追っかけで薄めて飲んでいる。
そこからはSH8に右に折れ内陸を走り始める。ここからは太陽の傾きもだんだんとドラマチックな影を作り始める時間になる。
Fairlie(フェアリー)の辺りはとても嬉しいワインディングだ。カーブがひとつひとつ美しい。楽しくなる道なのだ。牧歌的な景色が心を癒してくれる。
それが終わると今度は両脇が無くなる感覚なくらい広い所に道が一本走ってる。自由になって走れる感じだ。夕焼けまでにはまだまだ時間もある。Tekapo(テカポ)という、小さな町でまた日本食で夕飯とする。
Kuzzyさんの行きつけの店で、顔が利く。さすが、メニューに無いもの注文してるし。それに私も乗っかった。ちなみにこの近くを流れる淡水の水路でサーモンを養殖していて、それが名産である、が、今回はカツ丼。
またまた食に満足した二人は夕焼けになりつつあるその風景の中、ひたすら西に走り続けた。
サーモンの養殖場がある水路脇は不思議な絵になる。
こんな時間にこんな所にいて、まだまだこの先3時間ほどあるのだが。しかし、この感覚、たまらない。何とも言えぬ、いーい時間帯である。
そして、いくら日が長いと言っても、Queenstownまでの家路の最後の1時間は川沿いのワインディングを含む、まっ暗闇の中を走る事になった。か細い私のバイクのヘッドライトではスモークのかかっているバイザーとではいかにも効率が悪く、Kuzzyさんに先導してもらう。新しいバイクのヘッドライトは明るくていいな。
しかし、そんなヘッドライトに吸い寄せられる蛾がたちまちバイザーに次々と打ち当たる。スモークだからとちょっと開けて視界を確保しようか、なんて思うが、それじゃ目に蛾が入ってしまい、危険度が増すかもしれない。第一気持ちがよくない。
そんな事を考えてると、ちょうど視界のど真ん中に大きめの蛾が当たり、視界の殆どを塞いでしまった。それに対して「うぉーッ」と口を大きく開けて叫んだらヘルメットのあごひもがあごによって下に引っぱられ、ヘルメットがちょっとだけ下にずれて視界を得る事ができた。思いがけない発見をした。
それからはずっと口を大きく開けて走る事になった。とても口の中が渇いた夜になった。この頃はまだインターコムを使っておらず、この珍事の実況中継をKuzzyさんにできなかったことが悔やまれる。
教訓:夏の夜は喉が渇く。
おしまい。
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