2015年11月19日木曜日

大、大、大好きな道。

2015年10月末。

今年初めてのQueenstownクイーンズタウンからGlenorchyグレノーキーまでのチョイ乗り。
先日書いたように9月には走れる状態ではあったのだが、あまりにも寒くて億劫でほとんど走らずに、もうそろそろ2ヶ月にかかる頃だった。高い保険も登録料も払っているのにもったいない。もう春先に生まれた子羊たちはもうそろそろ大きくなり始め、牧草地をピョンピョン跳ねている頃だ。

そんな時、快晴で無風状態、これは行くっきゃない。
早速いつものようにKazzyさんを誘う。もちろんホイホイついてくる。
我々もその可愛い子羊の様にウキウキとはしゃぎながら2台のスポーツスターを走らせた。

今回は借り物のGoPro3をお供にして、その様子をムービーで撮ってみた。



ところがこのGoPro3 どうやら壊れている様で、専用アプリを使ってもモニターができない。他のファンクションはちゃんと操作できるのに。懇切丁寧なサービスに電話しながら全てやることをやったのだが、電話の向こうの彼もお手上げだった。

しかも、途中、なぜか勝手に録画が止まってたりして、非常に頼りない個体なのだが、借り物だし、しょうがない。でもしばらくはこれで遊んでみよう。

それにしても、この道、相変わらず、素晴らしい。絶景を楽しみながら走りも堪能できてしまう。小一時間、行った先は美味しいカフェで一休み。行くぞと気合を入れないで、その日のちょっとの都合で来れる場所。正に、チョイ乗りの為にあるような道。

大、大、大好きな道だ。






2015年11月9日月曜日

冬眠終了。目覚めよSportster

2015年9月

どうやら私の思考と行動は季節にとても影響されているようだ。
四季を通して幸か不幸か、それはまるっきり変わってしまう。これは南緯45度という非常に乾燥した場所で、小さいながらも一応、都会的要素を含む生活リズムでを送りつつ、厳しい自然環境で大きく変化のある風景と温度、それに観光地という特性から人口密度とそれによる繁栄というものが深く関わっているに違いない。 

とりあえず、こんな場所に住むバイカーとしては冬の期間は冬眠である。路面は所々凍りつき、その凍結対策に巻かれた細かな砂利が良いのか悪いのかわからないが、とにかく寒くてツーリングの楽しさなんてどこにもありゃしない。

あるとすればきっとそれは行った先のカフェでいただくあったかいスープかコーヒーであろう。もし、カフェが営業していればというのが前提だが。冬季、客足の少ない町のカフェなどは結構の長い間、店を閉めきって、赤道に近い島々にウキウキとホリデーに出かけてしまったりしているものなのだ。

でも、そんな私のような軟弱者なぞ相手にしない大イベントがある。冬の入り口の5月の終わりに周りに何にもない平らな大地でバイカーがみんなで集まってキャンプするっていうイベントだ。Brass Monkey Rallyという。 気温は−20度以下になることもあるそうだ。周りに何もなく、当然テント泊である。

30年以上続いているイベントで、参加連続それぞれ10、20、30年でもらえる記念バッジがあるという。真の本物のバイク乗りの証なのだ。現在47歳の私にはたとえ来年から参加したとしても到底30年バッジはおろか、参加しようと思う事は多分ないだろう。
真のバイク乗りには一生なれないのだ。

というわけで6月から眠り始め、そして、9月ようやく目が覚め、気合を入れてガレージのドアを勢いよく下から上に振り上げて開ける。ちょうどモグラが土から出てくる感じで。しかしながら9月だってそんなに気温が上がるわけではない。南中を過ぎてようやく空気がじわっとあったまり始める頃、それこそちょろっと走ることができるくらいになる。(あくまでも軟弱な私の場合だが)

革ジャンの下はしこたま着込み、黒いミシュランマンみたいになっている。そのせいで動くのも不自由だ。腕も肩以上は上がらないだろう。ほぼ体にフィットしている型の革だ。伸びるわけもないので全身パンパンである。とにかく用意はできた。

この3か月の間、度々バッテリーをチャージしてあったのでイグニッションをひねるとヘッドランプが眩しく点灯した。そこで良し、とセルを回すと、なんとも聞いたこともない音がした。


そしてエンジンはかからなかった。
しょうがないので着替えてバイク屋に相談に車で出かけた。最近、経営者が変わっていて、全員とも全く見たこともない人たちが働いていた。

このビデオを見せて、そのワークショップのメカニックにバッテリーじゃないかと言われたのだけども、フル充電したはずだからと言い張ると、それなら高い修理が必要かもな、なんて言われてがっくりと肩を落とし帰ってからもう一度祈る思いでバッテリーチャージャーに接続すること丸一日。チャージ完了のグリーンランプがついた。

期待を込めてセルを回すと、なんだ、ちゃんとエンジンが回るじゃないか。
あー、よかった、と間抜けな私である。

そういえば、チャージャーをはずしたのは3週間ほど前だったかもしれない。ちょっと気が早いので、チャージするのを時期早々に切り上げていたのだった。もちろんその時もセルを回してチェックしているのだが、それからそんなに早くバッテリーが劣化してしまう寒さなのだ。わからない事はない。これは何年目だろうか、早くこのバッテリーも交換しなくてはいけないかな。

この季節の変わり目に私の心と体も目覚めるように。
さあ、走るぞ。





2015年6月5日金曜日

息子と最後の日を。

2015年5月31日

シーズンが終わり、今日で乗り納め。
頭でわかっていながらもあんまり乗り出す事がなかったシーズン終わり。

そういえば、うちの2番目小僧が急に「バイクに乗せて」とお願いしてきたのが今月頭だった。ちょうど休みで、そんなに天気も悪くない。
ウダウダとカウチでぐうたらしていた自分に喝を入れる。

即刻、小僧を着込みさせ、我も革ジャンに袖を通した。でも下は最近ずっとどこでも履きっぱなしのユニクロの暖パンのままだ。

ヘルメットは奥さんのでぶかぶかだけどもしょうがない。早速インターコムで話せるのが面白くてしょうがないらしい。問いかけては私の答えを待っている。かわいいやつだ。

ひとまず、うちのブロックをゆっくりと一周りする。ほんの2分ほどだ。今朝の雨上がりのせいか、意外にあったかい。ところでユニクロの暖パンは優秀だ。化繊でできているのに薄っぺらの革パンツよりもあったかく感じる気がする。

小僧の方はと聞いてみるとしっかりと着込んだせいで「あっつい」などとほざく。最近は寒くなったにもかかわらず、ほとんどを制服のポロシャツ1枚で過ごしている半ズボン坊やは普段からの鍛え方が違うようだ。

もうちょっと周りを回ってみよう。

Kuzzyさんのうちへ行ってみた。するといつもの音に気がついて窓から撮ってくれた。
二人で手を振った。Kuzzyさんのハーレーはもう既に冬眠に入っているので一緒には走れない。そのまま二人で更に行く。

「どこへ行きたい?」と聞くと「町に行ってアイスクリームを食べたい」と言う。


いや、この寒さでさすがにそれはないだろう。
という事で、ちょっと高台まで。

わりと急な登りでしかもぐいっと曲がった坂を登ると早くも砂利が巻いてあった。冬の風物詩だ。氷が張るのでそこらじゅうに巻くのだ。危ない危ない。


いつもおちゃらけな小僧で、まともな笑顔が撮れる事がない。偉く得意な顔になる。全く誰に似たんだか。たまらなく親バカになる。


私が撮り終わるとカメラを貸せとiPhoneを奪い取られる。
そして撮られる。


寒い青い空の下、二人の男は交互にヘルメットの中で満面の笑みだった。

私には14歳になる長男がいるのだが、彼はバイクにも私にも全く興味がないらしく、性格も全く合わないのだが、この8歳次男とはめちゃくちゃ合う。遺伝子が分裂したかのようだ。正にコピーミーである。

最後にガソリンスタンドに寄って支払いを済ませる時に店内に一緒に入ると、セキュリティの都合上、ヘルメット着用のままだと入店お断りなのだが、さすがに子供はOKのようだ。ここでもなぜか得意そうな笑顔を見せる小僧だった。

あと10年経ったらこいつも乗るようになるのだろうか。父親ライダーならきっと誰もが思う事なのだろう。

満タンにしたハーレーはこれから3ヶ月ガレージでゆっくりと眠る。




2015年5月22日金曜日

リスペクトしましょう。

2015年5月。

今月の終わりからハーレーは3ヶ月の冬眠に入る。5月に入ってからはほとんど跨る事がなかったし、妻とのランチライドもずっとしていない。今日は久々に晴れたので早速出て行く決心をした。先日にも予定はしていたのだが、雲行きが怪しくなり断念したのだった。でも今日は昼には気温も上がり始め、気分も上昇だ。

私はパッチの上下にTシャツ、そしてネルシャツを着てインナー用にユニクロのダウン、そしてアウター上下はいつもの革だ。靴下も厚手のものをさらに重ねた。これでほぼ完璧なはず。

準備の終わった妻が家から出てくるとあまりいつもの格好と変わり無い。いくらかいつもより着込んでいるから大丈夫という。きっとたくさん脂肪をお持ちなので大丈夫なのでしょう。あまり言うと怒られるし。まさにこれはリスペクトである。

ガレージから出し、久々に火を入れたハーレーのアイドリングは時折咳き込んでいるのが気になる。セルが調子良く回ってくれたのはすこぶる嬉しい。冬季はちゃんとチャージしないとな。

カメラはほとんどいつもサドルバッグに入れて持っていくのだが、今日は標準ズームを外し、久々に50mmレンズを付けてみた。この小ささが良い気分なのだ。本当はもっともっと小さなカメラが欲しいのだが。かと言ってiPhoneではつまらない。

行き先はいつものGlenorchyだ。風もなく湖は静まり返っている。きっといい走りになるだろう。走り出してすぐ、町まではずっと道の北側が高く太陽の当たるところはとても少ないのだが、相当に着たせいか、寒さがしみるというほどでも無い。後ろの妻も意外に寒く無いという返事がインターコムから返ってきた。5分ほどでQueenstownに着く。

5月のQueenstownの町の中は10年前まではゴーストタウン化していたのだが、今のこの町の中といったらどうだろうか、人がそこここに歩いているし、店だって活気があるようだ。大概この一ヶ月は静まり返っているのに、ツーリストらしき姿の多いこと。町と人口が拡大しつつあるのを顕著に感じられる。そのうち大都会のようになってしまうのかもしれない。

町を過ぎてもしばらくはずっと日陰だ。道路もしっとり濡れているところが多くて一段と気をつける。決まって濡れているのはカーブで傾斜があるところだ。いつもよりものんびりと走らせた。

空気がとても澄んでいる。昨夜雨が降ったので空気中の塵が落ちてしまったからだろう。美しい景色を眺めながら感動を分かち合えるのはまさにプライスレス。でも妻の返事はそれなりに、くらいの程度なのだが。バイクに乗ると空気感を嫌でも感じるので、たとえ同じ風景を見ていても車に乗って見ているのと感動の大きさは全く違う。

起伏のあるワインディング道を上がり下がりするたびに見える湖とのコンビネーションがいちいち目を楽しませてくれる。

思わずいつもは止めない高台にバイクを止めた。
周りの山々はすっかり雪化粧をしている。





このカーブを過ぎて坂を下って行くといつも止まるルックアウトがある。
Bennet's Bluffだ。
空は澄み渡り、眼下の湖は音もなく静かにじっとしている。
自然が作った造形にしばしうっとりする。




お腹が減った。もう1時を回っている。
太陽に向かって時折眩しく反射する道路と湖面を見ながら、ここからは20分ほどで村まで着く。




ここにも少なくはない観光客の姿が見えた。Queenstownも有名になったものだ。感心する。そういえば世界のなんとかトップ10とかにも数度出ているみたいなので、そう思うと納得せざるを得ない。

いつものカフェに近づくとCloseのサインがドアに。7月の頭くらいまで休むという知らせ。あー、残念。と言ってほかのカフェへ行ってみようかと、しょうがなくぐるっと回る。数は知れているので諦めてそのまま帰ることにした。ほかのところで良い目にあったことがないのだ。


さて、帰り道。
二人の言葉の数はだんだんに減っていった。もともと酔っている時以外、口数の多い二人ではないので普段の生活でも静かなのだが、今はめちゃくちゃ静かだ。時折私がさみ〜っと雄叫びをあげるのだが妻はそれにも反応しない。

私は着込んだせいで体はそれほど寒くないのだが、夏用のメッシュグローブはいただけない。いくらグリップヒーターでHiとLoがあってHiにしたところで、手のひら側はポカポカでも指先と手の表側はめちゃ寒いのだ。当たり前だが。冬季用のグローブも持っているのだが、分厚すぎてしまって操作がしづらくて好きではないので使ってないのだ。

だんだんその寒さは体全体に回ってきた。日光の当たらない場所に入ってからは尚更だ。顔も強張ってきて頭が朦朧としてきた。視界もなんとなくぼんやりしてきた気がする。昨日の寝不足も祟っているのか。そんなことが途端に頭を駆け巡る。時折、後ろの妻が生きているのか確認するのだが、うん、しか言わない。よっぽど寒さで参っているに違いない。

人の話を参考にしないにもほどがある。私が妻をリスペクトした結果である。
でもきっと私はこれについてこれからあーだこーだ言われてしまう可能性を秘めている。

町に戻った我々はタイレストランにこぎつけ、私はチリのたっぷり入ったグリーンカレー、妻はヌードルスープにチリをいつもより多めに振りかけて、凍えて震える箸でヌードルをつまみ、熱いはずなのにフーフーもしないでそそくさとすすっていた。




2015年5月8日金曜日

ミッド・エイジ・クライシス?

20155月。

晴れ間だ!
出かけるぞといろんな合間を縫ってハーレーにまたがった。
今日の空は南側が青いので、そちらに向かう。ご機嫌なワインディングを30分ほど行くと着くKingston村の手前にお気に入りの白いビーチがある休憩所がある。そこにあるポプラを見に行こうと走らせる。


出発してすぐのところで止めてしばし山を見る。多めの雲が演出して落とす太陽の光と雲が代わる代わる目を楽しませてくれた。山の凹凸がその影を所々強調している。
ちょっと前まで雪が積もっていた山頂辺りだがもうすっかり溶けている。

今日は気温が異常にあったかい。なんでも19度もあるという。これでは春ではないか。下手すれば夏の日だってこんな感じはあるもんだ。陽気な空気に背中を押されている感じで楽々と100km/h巡航する。先週寒かったので、今回は革ジャンの下にはこの地では入手が困難なuniqloの薄手のダウンを着込んだので、すごいポカポカだ。



例年カメラを構える見事に黄色になったポプラの列がある所で撮ってみる。最近の強風と大雨に耐えてまだ葉っぱがしがみついていて五部咲きならぬ、五分落ちというところか。朗らかな太陽の下、車両を止めて写真を撮っている姿は他には見なかったので、ほとんど観光客もいなくなってしまったのかもしれないと思った。しかも、いつもたくさんいたはずの羊たちも留守だった。人口密度も羊密度も非常に低かったということだ。

ダウンはどうやら暑すぎたようだ。こうしてiPhoneで写真を撮ってバイクの周りをうろちょろしていたら汗が出てきた。ところで、ここの街にユニクロ出店してくれないだろうか。重宝するのにな。


ここは私道の入り口。オフロードなので見るだけで満足。
ポプラの落とす影がたまらなくいい。時折吹く風が無数の黄色い葉をハラハラと吹き飛ばす。その風景は儚いものだ。私も歳を重ね、侘び・寂びもいくらか体で理解するようになったのかもしれない。

ハーレーを買った時には周りにはミッド・エイジ・クライシスと言われ、最近は男の更年期障害だと言われているのだがらしょうがない。でも、おそらくそうならない事には侘び寂びはきっと理解できないのだ。大人になったという事であるということではないだろうか。



目的地に急いで行かなくていいのがいい。
ゆらゆらと走り右手の湖を見ながら道路脇にソロソロと止まってはiPhoneを取り出しピチャピチャと撮るのだ。小さいカメラが好きだ。ポケットに入るなんて、素晴らしい事だ。





こっからちょっと行くとすぐ休憩所だ。ほとんど直線のないワインディングだが高速で走れるので快適だ。見える景色も最高だし、しかも全くと言っていいほど交通量がない。風も味方してくれているようでアクセル開度が少なくてスイスイ進む。鼻歌気分だ。

道の端っこから1mくらいの所に直径15センチくらいの石が崖から転げ落ちていたようだった。つい先日あったM6の地震のせいかもしれない。震源がそんなに遠くないのだ。最近大きいのが多くてすごく不安である。感じるまでにはならない小さいのも頻繁に起きているみたいだ。

もし大地震が来ると急な山が土砂崩れを起こして、その土砂が湖に落ち、津波が起きるとまで言われている。ここもどうやら20年以内にM8+が起こると言われている。家族会議を開かなくては。そういえば早速、予備にガスボンベなど買い込んできたのだった。


目的地に着くとこちらは葉っぱのほとんどが落ちていたがその代わり、地面は黄色い葉っぱで埋め尽くされていた。ここの紅葉見物は見上げないで見下ろすのだ。不思議とスパッと道路上には落ちていないのだが。

先客のレンタカーが一台、観光客のものだった。東南アジア系の女性ばっかりがいてその落ち葉に寝転びながら写真を撮り合っていた。あいにく、この時は風が強く吹き始め雲が多くなり、日は一瞬しか刺さなかったのだが、キャピキャピと楽しんでいるようだからきっと彼女たちのいい思い出の1ページとなる事だろう。家から30分しか離れていないこの私にとってでさえもこうして思い出の1ページになるのだから。


帰りはやはりきつい向かい風だった。スロットルを開けても開けても進まない感じ。
これも思い出の1ページの断片に加えよう。




2015年5月5日火曜日

日向ぼっこの紅葉

2015年5月。

早くももう五月。今月末をもって我がハーレーは冬眠に入るのだ。3ヶ月間はハチャメチャ寒いので全く走らない。中には年中走るツワモノ(好き者)もいるが、私のハーレーは道路使用登録をその期間は外してしまうのだ。そうするといくらか節約にもなる。

というわけで、とにかく残された晴れの日には走らないと、なのである。
早速いつものようにKuzzyさんを誘い出す。相変わらず暇な二人なのだ。

集合してから行き先を決めるのもこの二人のやり方である。今日は近場でCromwell方面と決めた。紅葉を存分に見ようという計画だ。

革ジャンの下に着込める服の数は決まっている。私はいつも以上にプクプクと膨らんだ上着だ。晴れてて気温が高いとはいえ、やはりちょっとスースーするものであった。Kuzzyさんは完全防備の全天候型ジャケットアンドパンツでヌクヌクだと言っていた。私も全く同じものを持っているのだが、やはりここは我慢してみたいのだ。

交通量はぐっと少なくなった。もちろん平日の昼というのもあるのだが、それにしても少なかった。いつものKawarau渓谷を抜けると周りの木々はすっかり真っ黄色。これも美しいものだった。ご苦労な事にパトカーは峠のブラインドに隠れていた。ひょっとしたらお巡りさんも取り締まりと称して花見ならぬ紅葉見物にでも来ている気分なのかもしれない。



ぐるっとそのそれほど大きくもない町を回り、Old Cromwellという町の片隅の川のほとりに密集する観光客向け的な一角にバイクを止めた。ここに来たのも随分と久々だ。ホリデーでもないし、全くと言っていいほど人が見当たらなかった。お店で働いている人たちの方が道を歩く観光客より絶対に多いに違いない。


廃れた町の感じをさらに廃れているように見せるシトロエンのディスプレイ。



お店も何を売っているのか入ってみるまでわからない。古い建物のデザインと看板をそのままに、建物の中の営業は違う商売になっているのだ。例えば看板にHotelとか言ってあっても雑貨屋なのだ。


猫も暇そうである。ずっと湖を見つめている。


我々は長々と猫のいる隣のベンチで話し込んだ。背中に当たるポカポカ陽気がたまらなくいい。猫の気持ちがわからないでもない。

二人の会話に入れない猫はいつのまにかどっかに行ってしまった。それとも我々の会話がつまらなすぎたのかもしれない。


そうしているうちに空腹を憶えた。そんな時、エプロンをかけた綺麗なお姉さんがカフェの中に入っていったのが目に入った。どうやらそこのカフェ店員で隣のお店のおじさんにコーヒーでも届けてきたような感じだった。折角だから、ここにしようとその店に入っていくと渋いおじさんが一人だけいて、気さくに声をかけてきた。あれ、さっきのお姉さん、どこ? 餌か!

とにかく、じっとメニューを眺めるKuzzyさん。私は実はこだわりがそれほどない方で、割とメニューを決めるのが早く、オーダーしようとすると、もう一件のイタリアの方を見てみようという。Kuzzyさんはこだわる人だ。

この一角の入り口にあるのがイタリアカフェだった。そちらに行ってみる。メインのラップみたいなものをオーダーした時に目に入ったレジの横に置いてあったシナモンロール、私はシナモンは好きではないんだけども、なぜか頼んでしまった。食べてくれと言わんばかりの美味しさアピールが凄かったのだ。で、おいしかった。大当たりの店だった。

いつの間にか先ほどの黒猫が私の座るベンチの横に上がってきて私に擦り寄ってミャーミャー(くれくれ)と騒いでる。あげないが。



食後はさらに奥のBannockburnという地域に行ってみる。先ほどの所からたったの5分だ。青い小さな湖(入り江)を黄色になった木々が囲んでいる。道路脇の高台から見下ろした。

この辺りもワイナリーがたくさんあるところだ。この小さな湖の周りにはワイナリーが乱立している。今回は試飲をすることはなかったが、いつの日かじっくりと一件一件巡ってみたい。

そういえば、初めてKuzzyさんとバイクで一緒に走った時に来たところでもある。
当時はKuzzyさんはYamahaのTTRに乗っていたのだ。それを借りて私は免許の試験を受けたのを思い出した。ちなみにその時の話はこちら


 どうやら、ちょうどバッチリ紅葉の見頃に来たようだ。


帰ってワインを飲もうと思った。



2015年4月26日日曜日

昇天した。

2015年4月下旬。

こちらは秋である。
広葉樹が多いこの辺りは紅葉でも有名だ。Arrowtownがその密集度と町の建物の雰囲気とのコラボで一番有名ではあるが、紅葉は近郊50kmくらいに広がっていてQueenstownやCromwellでもあちこちに美しい紅葉が見られる。

最近特に冷え込んでいた日々が続いて、2週間前には雪まで降る始末、秋を通り越して一気に冬になってしまったかと思われていたが、久々に陽気が差して風もない。行くしかない!

早速Kuzzyさんを誘うと2つ返事で乗ってきた。ランチを終えてから集合する。
出かける30分ほど前、我が家のリビングから見えるこれから出かける湖の方を見ると物凄く深い霧が湖の上空50mくらいを覆っている。その上は快晴でなんともいい景色なのにだ。

その霧のスピードはとても速く、みるみるとこちらの方角へ迫ってくる。これでは出かけられないのではないかと思うほどだったが、気温が上がる方が早かったのか、近ずくに連れてどんどん消えていった。

その話をインターコムでKuzzyさんにしながら進んでいった。
さすがに4月の下旬ともなれば気温は下がるが、町のホテルの看板についている温度計は11度を指していた。直射日光が当たっていればめちゃくちゃ暑いが、バイクに乗るとそういうわけではない。袖口から入ってくるのはやっぱり冷たい風だ。

Wakatipu (ワカティプ)湖はQueenstownの町を通り過ぎてしばらく行くと直角に曲がっているのだが、そこに着いたらいつもの風景が違った。左手に見える湖の上には先ほど見た深い霧が覆っていて、湖面が全く見えない。こちらの方角はまだ空気が冷たいのだろう。

早速滅多に行かない駐車場を見つけてハーレーを停めた。


二人とも呆気にとられ、しばらく感動の声をあげて見ていたが、ここは視界が狭くてよく見えるところではないので、もっとさきに行ってみようと再度エンジン始動して走り始めると霧はだんだん上昇してきた。我々のいた場所はこのGlenorchyに続く道では割と高い位置になるがどんどんこちらに向かってくる。我らは雲の中に突入した。

ヘルメットのシールドが湿り始め、空気が一段とひんやりしたが、ほんの一瞬であった。我らは雲を突き抜けて行ったのだった。左手眼下には雲が見えるが湖は見えないという不思議な景色だった。まるで飛行機から見ている風景だ。

所々、雲が異様に青い。湖の色が雲の薄いところを突き抜けてくるのか、雲の形が都合よく反射させているのだろうか、とか、気象博士になった二人は興奮していた。

そしていつも止まる展望台、Bennets Bluff(ベネッツ・ブラフ)に着くと真っ白な風景で何も見えないほどだった。雲は眼下を覆うだけでなく我々の視界を襲うように下から吹き上がってきた。

それでもしばらくぼーっとそこにいると風が吹いてどんどん霧が飛んでいくのがわかった。西の方からだんだんとあったかい空気が押している。その境が上から見ていて非常に面白かった。その風景を楽しむようにベルバードが目の前の木に止まり美しい声でさえずっている。私は興奮してシャッターを押した。



 とてもいいものが見られたと、二人は満喫してまたハーレーにまたがった。Kuzzyさんもこのような現象を見たのは初めてだと言っていた。もちろん私も初めてである。

霧が去った後の湖は非常に静かで湖面が鏡になっているようだった。ずっと左に顔を向けてGlenorchyまで走った気がする。美しいものを見ることには飽きないということが分かった。

「美しい日」はたとえ大都会でもどこにいてもそう感じることがあるが、その時に美しい景色にいるとその美しさは相乗効果をもたらしてさらに美しいものになる。美しいものをもつものの特権と言えるのではないだろうか。美しいものを美しい環境で見るということは素晴らしい体験になるということだ。

いつものカフェに腰を下ろすとランチタイムの後のロングウィークエンド前のウィークデーのせいもあってか、客は私達だけであった。いつもは空いてる席を探すのだが、今回はどこに座ろうかとたくさんあるテーブルで迷う我々だった。


陽気はいよいよ非常によく、サンスクリーンが必要なんじゃないかと思うくらい顔の表面がじりじりした感じがするほどだった。
しかしながらシーズンは後一ヶ月。これから一気に冷え込んで行くのだなあと思うと悲しいものがある。




Glenorchyも木々は黄色くなっていた。
もうしばらくあったかい晴れが続いてくれればもっと走れるのに。