2015年5月22日金曜日

リスペクトしましょう。

2015年5月。

今月の終わりからハーレーは3ヶ月の冬眠に入る。5月に入ってからはほとんど跨る事がなかったし、妻とのランチライドもずっとしていない。今日は久々に晴れたので早速出て行く決心をした。先日にも予定はしていたのだが、雲行きが怪しくなり断念したのだった。でも今日は昼には気温も上がり始め、気分も上昇だ。

私はパッチの上下にTシャツ、そしてネルシャツを着てインナー用にユニクロのダウン、そしてアウター上下はいつもの革だ。靴下も厚手のものをさらに重ねた。これでほぼ完璧なはず。

準備の終わった妻が家から出てくるとあまりいつもの格好と変わり無い。いくらかいつもより着込んでいるから大丈夫という。きっとたくさん脂肪をお持ちなので大丈夫なのでしょう。あまり言うと怒られるし。まさにこれはリスペクトである。

ガレージから出し、久々に火を入れたハーレーのアイドリングは時折咳き込んでいるのが気になる。セルが調子良く回ってくれたのはすこぶる嬉しい。冬季はちゃんとチャージしないとな。

カメラはほとんどいつもサドルバッグに入れて持っていくのだが、今日は標準ズームを外し、久々に50mmレンズを付けてみた。この小ささが良い気分なのだ。本当はもっともっと小さなカメラが欲しいのだが。かと言ってiPhoneではつまらない。

行き先はいつものGlenorchyだ。風もなく湖は静まり返っている。きっといい走りになるだろう。走り出してすぐ、町まではずっと道の北側が高く太陽の当たるところはとても少ないのだが、相当に着たせいか、寒さがしみるというほどでも無い。後ろの妻も意外に寒く無いという返事がインターコムから返ってきた。5分ほどでQueenstownに着く。

5月のQueenstownの町の中は10年前まではゴーストタウン化していたのだが、今のこの町の中といったらどうだろうか、人がそこここに歩いているし、店だって活気があるようだ。大概この一ヶ月は静まり返っているのに、ツーリストらしき姿の多いこと。町と人口が拡大しつつあるのを顕著に感じられる。そのうち大都会のようになってしまうのかもしれない。

町を過ぎてもしばらくはずっと日陰だ。道路もしっとり濡れているところが多くて一段と気をつける。決まって濡れているのはカーブで傾斜があるところだ。いつもよりものんびりと走らせた。

空気がとても澄んでいる。昨夜雨が降ったので空気中の塵が落ちてしまったからだろう。美しい景色を眺めながら感動を分かち合えるのはまさにプライスレス。でも妻の返事はそれなりに、くらいの程度なのだが。バイクに乗ると空気感を嫌でも感じるので、たとえ同じ風景を見ていても車に乗って見ているのと感動の大きさは全く違う。

起伏のあるワインディング道を上がり下がりするたびに見える湖とのコンビネーションがいちいち目を楽しませてくれる。

思わずいつもは止めない高台にバイクを止めた。
周りの山々はすっかり雪化粧をしている。





このカーブを過ぎて坂を下って行くといつも止まるルックアウトがある。
Bennet's Bluffだ。
空は澄み渡り、眼下の湖は音もなく静かにじっとしている。
自然が作った造形にしばしうっとりする。




お腹が減った。もう1時を回っている。
太陽に向かって時折眩しく反射する道路と湖面を見ながら、ここからは20分ほどで村まで着く。




ここにも少なくはない観光客の姿が見えた。Queenstownも有名になったものだ。感心する。そういえば世界のなんとかトップ10とかにも数度出ているみたいなので、そう思うと納得せざるを得ない。

いつものカフェに近づくとCloseのサインがドアに。7月の頭くらいまで休むという知らせ。あー、残念。と言ってほかのカフェへ行ってみようかと、しょうがなくぐるっと回る。数は知れているので諦めてそのまま帰ることにした。ほかのところで良い目にあったことがないのだ。


さて、帰り道。
二人の言葉の数はだんだんに減っていった。もともと酔っている時以外、口数の多い二人ではないので普段の生活でも静かなのだが、今はめちゃくちゃ静かだ。時折私がさみ〜っと雄叫びをあげるのだが妻はそれにも反応しない。

私は着込んだせいで体はそれほど寒くないのだが、夏用のメッシュグローブはいただけない。いくらグリップヒーターでHiとLoがあってHiにしたところで、手のひら側はポカポカでも指先と手の表側はめちゃ寒いのだ。当たり前だが。冬季用のグローブも持っているのだが、分厚すぎてしまって操作がしづらくて好きではないので使ってないのだ。

だんだんその寒さは体全体に回ってきた。日光の当たらない場所に入ってからは尚更だ。顔も強張ってきて頭が朦朧としてきた。視界もなんとなくぼんやりしてきた気がする。昨日の寝不足も祟っているのか。そんなことが途端に頭を駆け巡る。時折、後ろの妻が生きているのか確認するのだが、うん、しか言わない。よっぽど寒さで参っているに違いない。

人の話を参考にしないにもほどがある。私が妻をリスペクトした結果である。
でもきっと私はこれについてこれからあーだこーだ言われてしまう可能性を秘めている。

町に戻った我々はタイレストランにこぎつけ、私はチリのたっぷり入ったグリーンカレー、妻はヌードルスープにチリをいつもより多めに振りかけて、凍えて震える箸でヌードルをつまみ、熱いはずなのにフーフーもしないでそそくさとすすっていた。




2015年5月8日金曜日

ミッド・エイジ・クライシス?

20155月。

晴れ間だ!
出かけるぞといろんな合間を縫ってハーレーにまたがった。
今日の空は南側が青いので、そちらに向かう。ご機嫌なワインディングを30分ほど行くと着くKingston村の手前にお気に入りの白いビーチがある休憩所がある。そこにあるポプラを見に行こうと走らせる。


出発してすぐのところで止めてしばし山を見る。多めの雲が演出して落とす太陽の光と雲が代わる代わる目を楽しませてくれた。山の凹凸がその影を所々強調している。
ちょっと前まで雪が積もっていた山頂辺りだがもうすっかり溶けている。

今日は気温が異常にあったかい。なんでも19度もあるという。これでは春ではないか。下手すれば夏の日だってこんな感じはあるもんだ。陽気な空気に背中を押されている感じで楽々と100km/h巡航する。先週寒かったので、今回は革ジャンの下にはこの地では入手が困難なuniqloの薄手のダウンを着込んだので、すごいポカポカだ。



例年カメラを構える見事に黄色になったポプラの列がある所で撮ってみる。最近の強風と大雨に耐えてまだ葉っぱがしがみついていて五部咲きならぬ、五分落ちというところか。朗らかな太陽の下、車両を止めて写真を撮っている姿は他には見なかったので、ほとんど観光客もいなくなってしまったのかもしれないと思った。しかも、いつもたくさんいたはずの羊たちも留守だった。人口密度も羊密度も非常に低かったということだ。

ダウンはどうやら暑すぎたようだ。こうしてiPhoneで写真を撮ってバイクの周りをうろちょろしていたら汗が出てきた。ところで、ここの街にユニクロ出店してくれないだろうか。重宝するのにな。


ここは私道の入り口。オフロードなので見るだけで満足。
ポプラの落とす影がたまらなくいい。時折吹く風が無数の黄色い葉をハラハラと吹き飛ばす。その風景は儚いものだ。私も歳を重ね、侘び・寂びもいくらか体で理解するようになったのかもしれない。

ハーレーを買った時には周りにはミッド・エイジ・クライシスと言われ、最近は男の更年期障害だと言われているのだがらしょうがない。でも、おそらくそうならない事には侘び寂びはきっと理解できないのだ。大人になったという事であるということではないだろうか。



目的地に急いで行かなくていいのがいい。
ゆらゆらと走り右手の湖を見ながら道路脇にソロソロと止まってはiPhoneを取り出しピチャピチャと撮るのだ。小さいカメラが好きだ。ポケットに入るなんて、素晴らしい事だ。





こっからちょっと行くとすぐ休憩所だ。ほとんど直線のないワインディングだが高速で走れるので快適だ。見える景色も最高だし、しかも全くと言っていいほど交通量がない。風も味方してくれているようでアクセル開度が少なくてスイスイ進む。鼻歌気分だ。

道の端っこから1mくらいの所に直径15センチくらいの石が崖から転げ落ちていたようだった。つい先日あったM6の地震のせいかもしれない。震源がそんなに遠くないのだ。最近大きいのが多くてすごく不安である。感じるまでにはならない小さいのも頻繁に起きているみたいだ。

もし大地震が来ると急な山が土砂崩れを起こして、その土砂が湖に落ち、津波が起きるとまで言われている。ここもどうやら20年以内にM8+が起こると言われている。家族会議を開かなくては。そういえば早速、予備にガスボンベなど買い込んできたのだった。


目的地に着くとこちらは葉っぱのほとんどが落ちていたがその代わり、地面は黄色い葉っぱで埋め尽くされていた。ここの紅葉見物は見上げないで見下ろすのだ。不思議とスパッと道路上には落ちていないのだが。

先客のレンタカーが一台、観光客のものだった。東南アジア系の女性ばっかりがいてその落ち葉に寝転びながら写真を撮り合っていた。あいにく、この時は風が強く吹き始め雲が多くなり、日は一瞬しか刺さなかったのだが、キャピキャピと楽しんでいるようだからきっと彼女たちのいい思い出の1ページとなる事だろう。家から30分しか離れていないこの私にとってでさえもこうして思い出の1ページになるのだから。


帰りはやはりきつい向かい風だった。スロットルを開けても開けても進まない感じ。
これも思い出の1ページの断片に加えよう。




2015年5月5日火曜日

日向ぼっこの紅葉

2015年5月。

早くももう五月。今月末をもって我がハーレーは冬眠に入るのだ。3ヶ月間はハチャメチャ寒いので全く走らない。中には年中走るツワモノ(好き者)もいるが、私のハーレーは道路使用登録をその期間は外してしまうのだ。そうするといくらか節約にもなる。

というわけで、とにかく残された晴れの日には走らないと、なのである。
早速いつものようにKuzzyさんを誘い出す。相変わらず暇な二人なのだ。

集合してから行き先を決めるのもこの二人のやり方である。今日は近場でCromwell方面と決めた。紅葉を存分に見ようという計画だ。

革ジャンの下に着込める服の数は決まっている。私はいつも以上にプクプクと膨らんだ上着だ。晴れてて気温が高いとはいえ、やはりちょっとスースーするものであった。Kuzzyさんは完全防備の全天候型ジャケットアンドパンツでヌクヌクだと言っていた。私も全く同じものを持っているのだが、やはりここは我慢してみたいのだ。

交通量はぐっと少なくなった。もちろん平日の昼というのもあるのだが、それにしても少なかった。いつものKawarau渓谷を抜けると周りの木々はすっかり真っ黄色。これも美しいものだった。ご苦労な事にパトカーは峠のブラインドに隠れていた。ひょっとしたらお巡りさんも取り締まりと称して花見ならぬ紅葉見物にでも来ている気分なのかもしれない。



ぐるっとそのそれほど大きくもない町を回り、Old Cromwellという町の片隅の川のほとりに密集する観光客向け的な一角にバイクを止めた。ここに来たのも随分と久々だ。ホリデーでもないし、全くと言っていいほど人が見当たらなかった。お店で働いている人たちの方が道を歩く観光客より絶対に多いに違いない。


廃れた町の感じをさらに廃れているように見せるシトロエンのディスプレイ。



お店も何を売っているのか入ってみるまでわからない。古い建物のデザインと看板をそのままに、建物の中の営業は違う商売になっているのだ。例えば看板にHotelとか言ってあっても雑貨屋なのだ。


猫も暇そうである。ずっと湖を見つめている。


我々は長々と猫のいる隣のベンチで話し込んだ。背中に当たるポカポカ陽気がたまらなくいい。猫の気持ちがわからないでもない。

二人の会話に入れない猫はいつのまにかどっかに行ってしまった。それとも我々の会話がつまらなすぎたのかもしれない。


そうしているうちに空腹を憶えた。そんな時、エプロンをかけた綺麗なお姉さんがカフェの中に入っていったのが目に入った。どうやらそこのカフェ店員で隣のお店のおじさんにコーヒーでも届けてきたような感じだった。折角だから、ここにしようとその店に入っていくと渋いおじさんが一人だけいて、気さくに声をかけてきた。あれ、さっきのお姉さん、どこ? 餌か!

とにかく、じっとメニューを眺めるKuzzyさん。私は実はこだわりがそれほどない方で、割とメニューを決めるのが早く、オーダーしようとすると、もう一件のイタリアの方を見てみようという。Kuzzyさんはこだわる人だ。

この一角の入り口にあるのがイタリアカフェだった。そちらに行ってみる。メインのラップみたいなものをオーダーした時に目に入ったレジの横に置いてあったシナモンロール、私はシナモンは好きではないんだけども、なぜか頼んでしまった。食べてくれと言わんばかりの美味しさアピールが凄かったのだ。で、おいしかった。大当たりの店だった。

いつの間にか先ほどの黒猫が私の座るベンチの横に上がってきて私に擦り寄ってミャーミャー(くれくれ)と騒いでる。あげないが。



食後はさらに奥のBannockburnという地域に行ってみる。先ほどの所からたったの5分だ。青い小さな湖(入り江)を黄色になった木々が囲んでいる。道路脇の高台から見下ろした。

この辺りもワイナリーがたくさんあるところだ。この小さな湖の周りにはワイナリーが乱立している。今回は試飲をすることはなかったが、いつの日かじっくりと一件一件巡ってみたい。

そういえば、初めてKuzzyさんとバイクで一緒に走った時に来たところでもある。
当時はKuzzyさんはYamahaのTTRに乗っていたのだ。それを借りて私は免許の試験を受けたのを思い出した。ちなみにその時の話はこちら


 どうやら、ちょうどバッチリ紅葉の見頃に来たようだ。


帰ってワインを飲もうと思った。