2014年11月23日日曜日

バイクの英雄がいる。

Burt Munro (バート・マンロー)はバイクでの最速スピードを生涯追っかけたNZを代表する男であるわけだが、彼の人生は映画化もされている。実は私ものその映画で彼の事を知ったわけだが、実にユニークな男だったらしい。

ぜひ興味のある方には見ていただきたい。The World's Fastest Indian
バイク好きにはたまらないシーンがたくさん出てくる。

その彼を偲んでバイクの祭りが彼の地元の土地近辺で開かれるのだ。その名もBurt Munro Challenge (バート・マンロー・チャレンジ)という。実施は大体11月の下旬、だから今週末のことである。

これが数日間のお祭りで、日替わりでサーキットレース、ビーチレース、ヒルクライム、スーパークロス、はたまた超田舎の村中の道を閉鎖してやってしまうシティレースまであったりするのだ。映画でも出てくるのだが、そのビーチはバートが実際にマシンを持ち出して試走していたところらしいので、その所以もあって開かれるのは面白いと思う。もっともレースはオフロード車しか走ってないようだが。

レース出場者はもちろん出場料を払うけども、それを見世物にして観客もそれぞれ入場料を払うので、そのようにして毎年開催している。出場するには草レースなのでそんなに高くはない出場料だが、草レースを見るにしては$15と高い入場料だ。割引のウィークパスまである。でもKiwiは二輪好きがこんなにいるのかというくらい集まるのだ。

そういうわけで、毎年この週になると道を行く二輪の数がぐっと増える。私の家はそちらの方面に向かう国道沿いなので、ドコドコと普段よりずっと多い数の黒い集団のエキゾーストが途切れなくいつまでも聞こえたりするのだ。それだけでもウキウキしてしまう。

私もそれに混ざって行ったのは2011年のことだった。その時もKuzzyさんと一緒だ。Wyndham(ウィンダム)というなんとも言えない小さい村があるのだが、そこの村を閉鎖してのシティレースを見に行った。村なのでヴィレッジレースという方が合っているのか。こんな事で人が集められるのだから、いい村おこしである。とはいえ、村中の道路は閉鎖され、町民はほとんどの店も閉めて一緒に観覧しているのではないだろうか。

行ったことのない村で、メインの国道からは逸れていて、その村に行く用事がない限り行かないようなところだ。うちからは2時間くらいかかった。着くまでは不安になる程こんな先に果たして村などあるのかと思ったが。

やっと着くと交通整理のおじさんに棒を振られてこっちへ行くようにと指示されるがまま行ってみると、どうやらコースの横の道を入っている。前方を見ると早速マシンが炎上しているのが見えた。字のごとくの炎上である!隣に積んである藁のフェンスにもいくらか燃え移っていたのじゃないかと思った。いきなりで二人とも超びっくりした。

普段は道路なのだろうが閉鎖しているので駐車場になっている。バイクがずらりと並んでいる。嬉しくなって思わずカメラを向けてしまう。こんなにもハーレー好きが多いのだ、この国。

会場に入るとちゃんと席も用意されている。藁やプラスチックのフェンスが積み上げられ、コースが完成している。こんな手作業的なところがとてもいい。

ベンチに陣取った我々はようやく始まったレースを高台から堪能した。普段はどこかのFMでDJをしているおじさんがマイク片手にとても張り切っていた。毎年このレース会場でもDJをしているらしい。実況中継もなかなかいい。

出場者達はとても古いマシンを改造して走ったり、昔のレーサーを手直しして乗るのがこっち流なのだろう、もしくはこの村レースに限ってのことなのかもしれないが、最新のレーサーレプリカなどはほとんど見当たらなかった。なので一人XR1200Rがいたのがとても印象深かった。

レース後、会場近辺を歩いてみるとレーサーたちのテントがあちこちある中、ひとつ、なんと本物のバートが作ったというマシンを展示していた。ひょっとしたら親族なのだろうか。だとしたら、これは家宝なのだろうなと思ったりした。


帰り道、ちょっとだけ回り道をして帰ってきた。緑の芝生が眩しい中を抜けてくるのはとても気持ちが良かったが、こんなオブジェがなぜかこんなことになっている田舎の事情はよく分からない。

これは先住民マオリたちに食べられて絶滅してしまったという怪鳥モアの像だ。割と頻繁に着替えるので有名であるらしい。

今週末は私は仕事で残念ながら行けないのだが、時間と興味のある方はまだチャンスがあるので是非、行ってもらいたい。
バート・マンロー・チャレンジについての詳しくはこちらで。

※本日のルートはこちら






2014年11月10日月曜日

彼女との会話。

今日も天気がいい。
太陽と青空が「お外に出ておいで」と呼んでいる。
よし、行こう。行くべきだ。


ランチを家で済ませてから妻を乗せて南へ走ることにした。
彼女はいつも後ろに乗っていて楽しいのか楽しくないのか、今までは会話ができなかったのでわからなかったが、今日から共感できるのだ。

日本で仕入れてきたSenaのインターコムを彼女のジェットヘルに組み込んだ。あっという間の簡単さで会話ができるなんて、時代の進歩だ。

3日連続で走るなんて、ロングツーリング行って以来じゃないだろうか。とは言っても昨日も今日もチョイ乗りだが。

彼女が後ろに乗ってこうして出かけるのは今まで何度あっただろうか。彼女は実はそんなに後ろに乗るのが好きじゃないという。シートは薄っぺらで痛いし、道の凹凸を拾うたんびにガツガツと突き上げを食らうとフロントに乗っている自分だって痛いと思うほどのサスペンションである。確かにタンデムには向いていない。かろうじて、バックレストが付いているのが2人乗れるよ、と主張している感じだ。

エンジン始動すると同時にヘルメット内で会話が始まる。私のはゴージャスなSenaのSHM10で彼女のは試しで買ってみたSHM3だ。基本的にできることのほとんどはSHM10と同じだが、おそらくほとんど彼女が操作することは考えてないで買ったものなのでOKのはずだ。
とりあえず感度良好である。

走り出す。すぐに橋を渡って川に沿って走る。この川ではいつも黄色いジェットボートがたくさんの客を乗せて絶叫させている。期せずして道路で並走することもあるとおもしろい。このKawarau River(カワラウリバー)は唯一、湖から流れ出る川であるので水量がすごい。人々はこの川下で釣りをし、ラフティングに乗り、カヤックに乗り、リバーサーフィンをやり、そしてバンジージャンプで飛び込んでいる。

川から離れるとすぐに直角くらいに道が曲がるところがある。左に曲がって直線、そして今度は右に直角だ。手前のは60km/hで次のは80km/hくらいで曲がれるのだがちょっと緊張する。しかも今日はコーナーの一番深いところになぜか牛のう◯ちがばら撒かれていた。これは危険危険。スリップしたらひとたまりもない。とんでもない迷惑だ。

こちらの国の「バイクを安全に乗ろう協会」みたいなのがあって、そのウェブサイトには「道路上のう◯ち情報」がアップデートされている。どこまで細かくやっているのか私もよく見ていないのだが、確かに必要かもと思った。

こちらの農家は家畜を道路を使って移動させているので、そのときにぼろぼろどちゃどちゃと落ちるのだ。とっても危険で迷惑である。あれはどうにか規制をしてほしいものだ。土地はたくさんあるのだから。

あれを踏むとなかなか落ちないのだ。車のフェンダー裏など、日が経つとさらに最悪で、本当に真剣にこすらないと落ちないので、あきらめることも多い。バイクでは絶対に踏みたくないものだ。

道はしばらくまっすぐになり、ポプラが綺麗に並ぶ美しい系のファームが続くのだ。道行く人々も車を止めてしばし撮影したりしている人が絶えない。ここは確かに絶景かなである。ごつごつとした黒い岩山と緑の芝が眩しく対照的である。秋は黄色が映えてとても良い。いつまでもこの景色のままであってほしいが、住宅地になるという噂もある。それはとても悲しいことである。

紺碧の湖を右手に見ながら小刻みなワインディングが続くのがこの南側の湖畔道路の特徴だ。Glenorchy(グレノーキー)のある北側はどちらかというと直線的で緩やか。最近は北側の湖の色はスリップのせいでちょっと緑がかっている。そして湖のほぼ中心から流れ出るのが前出のカワラウリバーだ。このLake Wakatipu(レイク・ワカティプ)は国内3番目の大きさを誇る湖である。湖沿いに端から端まで走ると90km以上もある楽しい道だ。町の中も抜けなくてはならないが、それはそれでそれも楽しい。

この小刻みなワインディングもある道は物資を運ぶメイン道路のため交通量は非常に多いのに道の手入れがあまり良くなく、時たま小さくもない凹凸が多いところがあるので気をつけなければならない。

それさえ気をつければ快適な道である。エンジンの開け閉めにブレーキにギアチェンジ、操っている感がすごく楽しめる道路である。もちろん景色もすごい。すぐ横には2000m級の山がそびえている。透き通る青い水の対岸にもまた真っ黒い山だ。

この様に私は快適だが、後ろの彼女はどうであろうか。私は走りながらその感動を伝えているのだが、さっきから「えっ?」「え?何?よく聞こえない。」と繰り返している。とても残念だ。

やはり安もんのジェットヘルでは巻き込む風ともともとの風切り音が相当にうるさいのだろう。スピーカーの音量マックスでも聞こえずらいみたいだ。先輩のShoeiのフルフェイスのヘルメットではこんな不便はなかったので、おそらくヘルメットのせいだ。
おかしいのは自分のエギゾーストの音がよく聞こえる。彼女のマイクが良く拾うのだ。
改良を加えなくては。

村に一軒しかないカフェに行くと結構人が入っててびっくり。ランチタイム終わりくらいだったので、きっとこの混みようがマックスだろうけど。
帰ろうと出口に行くと、もう一人、Yamahaに乗るおじさんライダーがいて日本人である私が言葉を話すのかどうか一瞬躊躇したみたいだが、「天気いいね」というと話しかけてきた。私のヘルメットに付いたSHM10が気になるらしく一通り説明をした。「これなしではもうバイクに乗れない」と。すると「私もすぐに買うぞ」と意気込んでた。

帰路の30分も彼女は「え?、何?」とずっと繰り返してた。



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2014年11月7日金曜日

最高以上の日。

今朝、先日のお風呂ツーリングについてKuzzyさんとやり取りをしていると、今日は昨日と打って変わってものすごくいい天気だということに気づく。

これは出かけなくちゃ、とそそくさまた午後から出発しようと企んだ。

1時シャープに現れたKuzzyさんは小さなパッチがいくつかついた黒い革ジャンと、ケブラーでできたジーンズ、そして赤いノースフェースのブーツとおしゃれ。一方、私はいつもの上下の革ジャンである。向かったのはいつもの道、Glenorchy (グレノーキー)だ。片道45分のチョイ乗りである。

めちゃくちゃいい青空で、風も吹いてない。ほんのり冷たい空気だが、まったりとした空間でゆったりとエンジンの鼓動を感じながら走った。いつもよりのんびりと90km/hで巡行した。景色が良かったり、気分が良くなると速度は遅くなるのだ。先日でも超長いストレートが全道程で一番遅く流して走っていたりしたのも事実。不思議なものだ。


雪がまだ多く残っている2000m級の山々を左手に見ながら太陽に向かって走っていくなんて結構な贅沢である。道が上がったり下がったり、左右に方今転換することで見え方が変わる湖がすばらしい。


そして、いつもの場所で一休みだ。
「最高」という言葉以上の言葉があるのなら、それに値する日だった。

その後、いつものカフェでいつものように日向ぼっこでロングブラックをすすりながら、長話した。何組ものお客が去って行き、入れ替わりに新しい客が入ってきていた。
だいぶ日焼けしてしまった。
いよいよシーズンだ。



「こんないい日に出てこない手はないね」と帰り道の会話。
いくらか向かい風になり、湖面に白波が立ち始めたが、我々はその眩しい新緑と青い空に白い雲、そしてエメラルドの湖を眺めながらこのひと時を楽しんだ。




2014年11月6日木曜日

お風呂好きな二人。

2014年11月。
NZに戻って初めてのチョイ乗りは帰ってきてすぐしたわけだけど、その時は面白かった。

日本でたった2日間だったけどまるまる乗り続けたW650に体が慣れてしまったのだろう、自分のハーレーに跨っているのにウインカーの位置を間違えるほどだった。これには苦笑した。コーナーリングもニーグリップがないし、ホイールベースも長く曲がりにくい。特性が違うものなので比べるのもなんだが。
もっとも、パワーとか音とかの満足感はやはり嬉しい。



さて、Kuzzyさんはここに住んでいながら冬の間はさらに遠いヨーロッパまで足を伸ばして働きに行くような人で、あまりここにいないので、先週ようやくハーレーの法的手続きを終え、道路上に戻したばかりだった。

なので今回はKuzzyさんとお風呂に行くことにした。私の誘いにウホウホと乗ってきた。
前の晩に約束をすると、「タオルを持っていく!」と意気込んでいた。

Omarama(オマラマ)というグライダーでは世界的に有名らしいが他には何もない町がある。本当に何もない。カフェとガソリンスタンドと公衆トイレくらいだ。でもしかもなんとそんなところにお風呂を作った人たちがいるのだ。お風呂といってもこちらでいうスパだ。しかもジェットがないやつである。薪を入れて沸かす五右衛門風呂風のものだ。

10:35シャープに約束通りやって来た。なんなのだ、この時間の設定は。でも時間通りである。そんなことで面白がってる二人だ。

まず、タイヤの空気圧のチェック。冬の間、全く乗らないので、チェックもしないと。家からすぐのガソリンスタンドに行く。エアーのチェックだけするとガソリンはほぼ満タンなので入れる必要は二人ともなかった。ガソリンスタンドに行ったのに、お金を払わないで出てくることなんて初めてかも、なんて思った。

走り始めると山の方が白い。真っ白だ。数日前に積もった雪が残っている。ついでに山の上には結構な雲があるが、さらにその向こう、東側には青空が覗いている。雲を追い抜けば晴れが待っているはずだ。

やはり2台目のSenaインターコムとのペアリングを登録してから、操作が困難になっている。なんとかカチャカチャしていると繋がったのだが、ちゃんと説明書を読まなきゃだ。このSMH10はすごいことができるのは知っているのだが、あまりにも多機能で操作ボタンがふたつである為、動かし方で色々違う。全て覚えて使い倒している人はメーカーの人から表彰されるのではないだろうか。将来的にはSiriみたいな機能がそれ自体に入っていくか、iPhoneとのペアリングがもっと密接になってなんでもスマートフォン任せになる方向に行くのじゃないかなと思うが。

いやあ、寒い。二人の会話も途切れがち。寒さが辛くて喋るのも面倒臭くなる感覚だ。出発して 1時間後の町、Tarrasで小休止。

素敵なカフェがあっていつも寄るのだが、今日は時間の都合でパス。5分止めただけで再出発。すると青空が広がり新緑の平らな牧草地で家畜がたむろしている。しかし、その向こうにある山々は真っ白だ。左手に見える山脈の上の方には雨が降っているのが見える。

澄み切っている空気はビシッと冷えて、透明度が半端ない。買ったばかりのShoeiのミラーバイザーが明るい視界ながらもちゃんと防眩してくれているのが嬉しい。不思議な機能だ。

そうして更に30分で着いたところは峠の上だ。Lindis Pass (リンディス・パス)である。

ちょっと大雪(どんな表現だ!)が降ると、結構な確率で閉まってしまう事が多い峠だが、我ら南島の下の方に住む人間たちにとっては重要なパイプラインである。
この写真を撮った場所の足元には雪が残っていた。寒いわけである。革ジャンの下に着たユニクロで買ってきた薄いダウンジャケットがとても役に立っている。一刻も早くお風呂に入らねば! 二人は凍りついた体に鞭を打ち、一気に峠を下る。

峠の下は明らかに気温が違い、ぬるあったかくなった。いつもの何にもない茶色い平らな大地が広がっている直線道路を走ると、なんとその茶色い大地が綺麗な緑の大地に変わっていたのに驚いた。ようやく、この地でも放牧を始めたらしい。農家が本気になったのだろうか。こんな大乾燥地帯にこれだけ大きな範囲で芝を生やせるなんて、驚きである。しかももうう、半端ない数の牛たちが放たれていた。

そして、二人はOmaramaのいつものカフェの前にバイクを止めた。お腹も減ったしトイレも行きたい。二人は安心して店に向かおうとすると隣に停めてあったパジェロに乗り込もうとする二人の白人男の老人たちが話しかけてきた。「俺も昔は乗ってたんだ。」からいつものごとく会話が始まった。なぜか我々はお互い一人づつ相手をしていたのだが、どちらも会話が終わらない。

私が相手をしていた老人はなんでも昔、韓国に住んでいたことがあり、北朝鮮の人々とも交流が深くあり、彼らに非常に思いやりを持っていると言っていたのにはすごく驚かされ、しかも、彼の言うにはニュージーランドと北朝鮮の国際交流をどんどん広めていき、教育や経済などの支援、更には北朝鮮という国がいつか、いわゆる普通の国になれるよう信じていると言った。

国家間のいろんな問題は山積みだけれども、バイク仲間同士で繋がることができるならば、という可能性を信じているということだった。
いろんな人がいるものだ。

ついでに言うと、先日どっかのリンクで見たニュージーランド人5人が北朝鮮の国境をバイクで越えるというyoutube画像だったが、この老人の知人であると言っていた。なんでもその彼らはでも韓国に住んでいる人達らしい。
ふーん、である。

そんな立ち話でどうやら30分も経ってしまったみたいだ。すっかり時間が狂ってしまったが、すごい出会いをした気がした。そそくさと我慢してたトイレに駆け込み、あったかいランチを注文する。バンズが具に乗っかってるくらいの絶対に閉まらないフィッシュバーガーが出てきた。満腹。ここのカフェはお気に入りのひとつと言える。まさに砂漠の中のオアシスだ。


さ、お風呂だ。カフェの向かいにあるところである。前の晩にウェブで調べたら2人での使用の場合は一人 $40と意外と高いが、お湯の入れ替えを毎度しているということを考えると店側の負担は少なくないはずだ。この値段の設定もうなずける。

入浴料を払うと$45と言われて、え?となる。5月から値上げをしたとおばさんオーナーは言う。「あのー、昨夜ウェブでは$40って見たんだけど」と言うと、「アップデートしてないだけだから」と。まだこういう態度でビジネスをやっている人は少なくないのだろうなあ、この国。ちなみにTrip Advisorでは満足度トップである。

Kuzzyさんは「水戸黄門」と書いた手ぬぐいをしっかり持って来たくせにバスタオルを持ってきていなくて更に$5で借りている。どおりで荷物が少ないわけだった。

いやあ、熱い熱い。日本人だから熱いのじゃないとダメだよ、なんて言ったらこのおじさん、ガンガン薪をくべてくれて、ごゆっくり、なんて言いながら去って行ったのだが、我ら二人の体はあっという間に茹でたたらこみたいになった。

このお風呂、いわゆる桶に薪ストーブが入っている状態なので、熱効率が素晴らしくいい。丁寧な作りでデザインも感心するほど。燃えたすすはいったいどこへ行ってしまうのだろうか。ポンプで循環している水もどうなっているのかよくわからないがすごい。

ここはプライベートがしっかり守られていて、この盛り上げた土で一つ一つのブースが囲まれている。お互いは全く見えない構造になっているので、スッポンポンでも大丈夫。スペースもなかなかの大きさで大人5人くらいでも良さそうだ。

おすすめは冬の夜だそうだ。夜空を見上げながら入る風呂は最高だぞと、オーナーおじさん。なかなか冬にこの町に来るお客も多くないと思うが。

すっかりあったまった体で帰路につく。ホテホテになった体なのでいくらかあったかく感じた。午後の気温といくらか良くなった天気のおかげだ。でも手はやっぱりグリップヒーターの恩恵を得ている。「グリップヒーター使ってるの?」とKuzzyさんが聞くので「もちろん」と答える。

丁度、いつも通る度に一緒に撮りたいと思っていた彫刻の前でバイクを止めるとここで初めてKuzzyさんはグリップヒーターのスイッチを入れた。今の今迄あんなに寒く震えていたのに、スイッチ入れずに走っていただなんて。それがある存在を忘れていたとか。

満喫した初チョイ乗りとなった。






2014年11月2日日曜日

番外編4:見えた!日本一の山!

−先日の続き−

妻によると、私は結構いびきをかく方であるらしいので、(特に飲んだ日は)先輩にそのことを告げてから寝た。布団はなるべく離していてもそんなものはないに等しいだろう。

きっと5分10分寝たと思ったら、すぐに覚醒してしまったのだろう。気づくと先輩がゴーゴーと寝息を立てている。やばい。

広い部屋には広縁が付いていて、私は自分の布団を引きずりそちらに避難、障子を閉めた。いくらか楽になったと思う。それからだいぶ経ってから眠りについたはずだ。

そうして迎えた朝はあまり、熟睡したという感じはなかった。朝ごはんを7時半にお願いしたこをとちょっぴり後悔した。この宿は二つある温泉が男女で日替わりになるので、なんとか起きて昨日と違う湯に浸かる。こちらは断然もう一つの方より小さいが、朝日が木々の間から差し込んで、湯気が逆光に移り、湯は気持ちよく、とっても清々しく迎えられた朝になった。

湯から上がると、用意された食卓は朝からボリュームたっぷりだった。アジの開きに日本滞在2週目でようやくありつけた。こういう庶民的なものに飢えているのだ。

宿を出るときは私たちを送ろうとフロントの方や女中さんが玄関前まで出てきてくれて、見守ってくれているのだが、暖機運転のためしばし待たせてしまっている感が辛い。ちょうど、横で他のお客さんが車で去ると、フロントのお兄さんはずっと黄色いハンカチをフリフリしている。次は我々の去る番だ。ドキドキする。

昨日なんでこの道から入ってこれなかったのだろうという、ホテル正面からまっすぐの道を行くのだが、これが辛い、バックミラーで確認したが、我らがぶつかった道を左折する間でずっと手を振り続けてくれていた。なんとも、である。日本のおもてなし、なのか。

大変お世話になりました。牧水荘土肥館さん。また機会があれば、ぜひ。


飛び出ると、すぐに迷子になる。普通は前の晩とかにちゃんと地図をある程度頭に入れておくべきなのだが、そんな事、全く考えつかなかった。反省なき男たちなのだ。
スパッと見つけたセブンイレブンの駐車場に入る。もう慣れたもんだ。


気がつけば、今日は昨日より天気が良さそうだ。
地図をざっと見て、海に沿って行けば予定通りだ、ということにしてとりあえず石廊崎を通って下田を目指すことにした。今日は出発が早いし、時間的にはすごく余裕がある。

今回のツーリングを機にヘルメットも新調したのであった。こちらから持って行くのも面倒だったというのもあるし、5年も使っていながらにして気に入らなかったものだからだ。一応 Harley 純正であるのだが、韓国製のOEMらしい。だから今回は大枚叩いてShoeiのZ-7だ。軽さを謳う商品だけあって、すこぶる調子がいい。同時にミラー加工のかっこいいシールドも買おうかどうしようか迷ったのだが、とりあえず、試してからとその時は見送ったのだ。(結局、のちに購入することになったのだが。)

相変わらず、くっちゃべりながら走る海岸線は楽しかった。しかしトンネルが多いなあ。伊豆はしょうがないけども、河口湖畔を通ったときに全く必要そうもないトンネルができかかっていたのが興味深い。すぐ脇を通れるのに。きっと大人の都合とか、あるのだろうか。

前の週にこの道は通ったと確信があった。恋人岬のあたりだ。緩やかな左コーナーを曲がりながら右手後方の海の方を見るとそこには富士山がそびえていた!やったー、やっと見えた!とガッツポーズ。前回は見えなかったのだ。昨日も見えなかったし。



さらに進むと富士山が見えない方向になってしまうのだが、またその先で見えるところがいくつかあって、その度にバイクを止めて見入るのだった。

すると、地元のおじさんもガードレールに腰を下ろし、ポットからお茶らしきものを注いでホッとしていた。仕事帰りなのか、行く途中なのか、一体どういう時間なのかわからないが、我々と同じ時間くらい眺めていた。富士山は偉大だ。



この街道沿いは彫刻の美術館のごとく、所々、たくさんの彫刻が並んでいた。これは必要なのだろうか、と先輩と議論する。結果、やっぱり効果的ではないと決定づけた。なぜ、こう脈絡のない形のものを選ぶのだろうか。伊豆と全く関係ないではないか。全く個人的意見であるが。

絶景をバックに自分のバイク2台を並べてみるなんて光景は先輩一人じゃできないだろうし、本当に良いことをしたと思う。

 アイスの模型も後ろの木のように曲がっててほしかった。

石廊崎を目指していた気がしたが、いつの間にか通り過ぎていた。あとで地図を見ると本背からそれないといけないところだったと気づく。すると、もう下田だった。ちょうど昼時と言えばそうだ。ではここでランチにしようと町の中を走る。町の作りはちっちゃくって面白い。でも歩くスピードじゃないと見つけられそうもなかった。なんども一方通行を走り、ぐるぐると2,3回町中を回ると、もういいや的な感じになり、町を出てしまった。

それからまた海沿いに進み、白浜海岸を通り抜け、河津で135号線を離れ、天城峠を目指したが、空腹をおぼえ、いいタイミングでいい雰囲気の蕎麦屋が止まった信号にあったので入ることに。これがうまかった。今回の帰省で一番うまかった。しかも大盛りを頼むと悲鳴をあげるくらいすごい大盛りで現れた。これは嬉しかった。

超満腹でとった行動は、今度こそ日没までに帰りつこうと最短時間を行こうということで、蕎麦屋にあったよくできた観光マップとGoogle Mapが示す最短時間と見てみて、伊豆スカイラインを通って小田原厚木道路を使おうということにした。

さすがに伊豆スカイラインは気持ちよかった。北上すればするほど綺麗な景色になっていった。やはり走ることを楽しみに来る人が多いのだなあと認識できるほど顕著なクルマやバイクが多かった。

この道路から見える富士山は本当に偉大だった。こちらもそれなりの高台なので、見え方がとても美しく、しかもすごく高く見える。眼下には平らな土地と駿河湾が広がっている。今一、クリアーな空ではなかったが十分に楽しめた。

ターンパイクの長い下りを走行中、ブスブスとWはガス欠になり、リザーブタンクへ切り替える。小田原でガソリンを入れてみるとまだリザーブを使うほど減っていない。どうやら下りで下を向いているその傾きのせいでリザーブを使うことになったのではと先輩は分析した。それにしても、私の走り方だと随分と燃費が悪いらしい。そりゃ失礼。

その後は無事、迷うこともなく高速を乗り継ぎ無事に帰路に着いた。
夕方、曇りがちな空は素晴らしく美しいピンクとオレンジに染まり、私たち二人の背中を照らしたのだった。




2014年11月1日土曜日

番外編3: ザ・ニッポン

−先日の続き−

ユニクロ発見。観音様とテトラポットが並ぶ隣にある店だった。即、店に飛び込み長袖プリントTシャツを買った。つい先日にも他支店で7年ぶりの買い物で5人家族みんなでそれぞれ買い漁って5万円以上掛かったばかりというのに、また買い足している。だいぶ貢献しているなあ。


早速それを着込んで出発することにした。もう、夕日になっていた。いいタイミングで買えたと思う。日本は便利だ。
予約してある宿もチェックインが5時を過ぎるようならば連絡をくださいと書いてあったので電話を入れる。Google Mapで見ればあと約1時間と出ている。

もう道に迷うことはなさそうだ、何しろ先週に家族で同じ道を通ってきたのだから。と、うろ覚えの道を行く。確かに見た景色だ。確か何度も関所を走るような有料道路を行ったと思う。バイクだとさぞ面倒臭いだろうなあと思いながら、車で通過したのだ。

だが行けどもその有料道路がわからない。いや、看板を曲がったはずなんだけど、なぜかわからない。そうしている間に日は沈んでしまい、だんだん暗くなってきた。いわゆる薄明だ。撮影用語で言えばマジックタイムだ。またもや見つけたコンビニの駐車場に飛び込んでGoogle Mapをチェックする。すると間違ってはいないようだ。

それを確認してから自信を持って進んでいくがどうやら有料道路は方向違いでこのまま一般道をそのまま行ったほうがよさそうだった。安心して進んで行ったのだが、なぜか道はめちゃめちゃ狭くなり知らぬ間に一方通行みたいな幅の道を進んでいる。両脇には風情のある建物だ。絶対に行くべく道と合っている気がしなくなった。

すると突然、提灯やら派手な赤い神社風なフェンスがある開けた所に出たところで、右手に見えたのは神社に向かう長い階段を上る4人のそれぞれ違う色の浴衣を着た女性の姿だった。時間にして彼女たちが2歩進むかどうかだったと思うがその瞬間が、ものすごく美しかった。これぞ、日本、と思わせる様なシーンに出会い、しばしジーンとした。

さて、ジーンとしたのもつかの間、まずは自分たちの行き先である。その道はあっという間に周囲が暗くなり、細々としてどこかの道とぶつかった。こちらの方が広そうなので、きっとどちらかに行けばどうにかなるはずだが、どちらが近いのかが問題だ。

もう真っ暗になっていて、またGoogle Mapを見るのだが、道が入り組んでいて角度が変わっていると交差点で見るマップは良くわからなかった。私はバカなのかもしれないと本気で思った。そうする二人の横を通りすがりのおじさんが声をかけてくれた。次を右、そして右、そしたら左で大丈夫だよと。礼を言っておじさんの言う通り、右、右、左と先輩と二人、吉四六さん状態で他のことを喋らないようにしばらく走ると、無事、それなりの道に出た。めでたく「西伊豆」を示す看板が見えた時の喜びといったら無い。

ようやく見つけたピッチブラックの136号線をひた走る。まだ周りにも車が結構走っていた。安全運転の先輩はスピードを落とすと地元の車にどんどん先を譲った。峠での走りは割と楽しめた。W650は手頃なパワーを所有しており、私のハーレーよりもはるかに良い効きのいいブレーキを持っているので、これでも俊敏な動きに感じる。Zephyrはどうだったのだろうか。途中、取り替えてもらおうと思っていたのに、チャンスをなくしてしまった。

日のあるうちだったら、もうちょっと楽しめたかもしれない峠の景色など全く無関係だった。達磨峠とかも行ってみたいなと日本へ来る前に妄想していたのに。

さて、目的地の土肥に着いた。でも実は、勝負はこれからだった。
着いたはいいが、町はガランとしていて人っ子一人歩いちゃいない。それどころか、宿の看板もどこなのかわからない。夜だと尚更なのだろう。町の中の道も升目だったりして、どこをどう走っているのかわからない。こうなると地図を見ながら歩いた方が早いくらいだ。さすがにiPhone片手に持ちながらバイクで走ることは困難だ。何度もその小さい誰も歩いていない町に二人のバイクのエキゾーストが響き渡った。

iPhoneで信じられないくらい細い道を曲がれと表示が出ているので、そこを入っていくとなんといきなり右側にそびえる、それは立派な旅館が目に飛び込んできた。牧水荘土肥館という。よく見ると、建物の目の前にはもっと簡単にこれる道がまっすぐ伸びていた。

ウェブで見つけて予約していたのだが、着いてびっくり、本当にすごい立派。天井は低いが屋根付きガレージでツーリング宿に最適だった。先輩もこれは嬉しかったようだ。

着いた時間は6:15くらいで、夕飯は6:30でお願いしますと言われ、いやあ、これには参った。ご丁寧に部屋の要所を説明され、その時間は更になくなる。どうしても、とお願いして15分延ばしてもらい、温泉にダイブし、濡れ濡れの髪のまま浴衣を着て夕飯へ。
料理は素晴らしく、大きめのテーブルが料理で埋め尽くされていた。こんなに出るのに、あの値段?と驚いた。二人の7年ぶりの夕食はとても楽しいものになったのは間違いない。久々に日本酒も入り会話が弾んだ。

先輩もあの神社の階段シーンに思うものがあったとその時初めて言い、二人で盛り上がった。いいシーンが観れたと。私があのシーンを撮れなかったのが悔しいと言うと、「いや、あれは撮ったらポスターみたいなつまらないものになる。」と言った。美しさを思いだす事が嬉しいと言っていた。

ほほう、である。ちょうど日本に来る時、機内で見たベン・スティラーのLife!を思い出した。


食後、今度はゆっくりと温泉に浸かり、疲れを癒しまくる。
もちろんコーヒー牛乳もいただいた。



戻った広めの部屋に敷かれた布団に寝転ぶと天井には手裏剣があった。
よく寝れそうだった。

まだつづく。