2014年11月6日木曜日

お風呂好きな二人。

2014年11月。
NZに戻って初めてのチョイ乗りは帰ってきてすぐしたわけだけど、その時は面白かった。

日本でたった2日間だったけどまるまる乗り続けたW650に体が慣れてしまったのだろう、自分のハーレーに跨っているのにウインカーの位置を間違えるほどだった。これには苦笑した。コーナーリングもニーグリップがないし、ホイールベースも長く曲がりにくい。特性が違うものなので比べるのもなんだが。
もっとも、パワーとか音とかの満足感はやはり嬉しい。



さて、Kuzzyさんはここに住んでいながら冬の間はさらに遠いヨーロッパまで足を伸ばして働きに行くような人で、あまりここにいないので、先週ようやくハーレーの法的手続きを終え、道路上に戻したばかりだった。

なので今回はKuzzyさんとお風呂に行くことにした。私の誘いにウホウホと乗ってきた。
前の晩に約束をすると、「タオルを持っていく!」と意気込んでいた。

Omarama(オマラマ)というグライダーでは世界的に有名らしいが他には何もない町がある。本当に何もない。カフェとガソリンスタンドと公衆トイレくらいだ。でもしかもなんとそんなところにお風呂を作った人たちがいるのだ。お風呂といってもこちらでいうスパだ。しかもジェットがないやつである。薪を入れて沸かす五右衛門風呂風のものだ。

10:35シャープに約束通りやって来た。なんなのだ、この時間の設定は。でも時間通りである。そんなことで面白がってる二人だ。

まず、タイヤの空気圧のチェック。冬の間、全く乗らないので、チェックもしないと。家からすぐのガソリンスタンドに行く。エアーのチェックだけするとガソリンはほぼ満タンなので入れる必要は二人ともなかった。ガソリンスタンドに行ったのに、お金を払わないで出てくることなんて初めてかも、なんて思った。

走り始めると山の方が白い。真っ白だ。数日前に積もった雪が残っている。ついでに山の上には結構な雲があるが、さらにその向こう、東側には青空が覗いている。雲を追い抜けば晴れが待っているはずだ。

やはり2台目のSenaインターコムとのペアリングを登録してから、操作が困難になっている。なんとかカチャカチャしていると繋がったのだが、ちゃんと説明書を読まなきゃだ。このSMH10はすごいことができるのは知っているのだが、あまりにも多機能で操作ボタンがふたつである為、動かし方で色々違う。全て覚えて使い倒している人はメーカーの人から表彰されるのではないだろうか。将来的にはSiriみたいな機能がそれ自体に入っていくか、iPhoneとのペアリングがもっと密接になってなんでもスマートフォン任せになる方向に行くのじゃないかなと思うが。

いやあ、寒い。二人の会話も途切れがち。寒さが辛くて喋るのも面倒臭くなる感覚だ。出発して 1時間後の町、Tarrasで小休止。

素敵なカフェがあっていつも寄るのだが、今日は時間の都合でパス。5分止めただけで再出発。すると青空が広がり新緑の平らな牧草地で家畜がたむろしている。しかし、その向こうにある山々は真っ白だ。左手に見える山脈の上の方には雨が降っているのが見える。

澄み切っている空気はビシッと冷えて、透明度が半端ない。買ったばかりのShoeiのミラーバイザーが明るい視界ながらもちゃんと防眩してくれているのが嬉しい。不思議な機能だ。

そうして更に30分で着いたところは峠の上だ。Lindis Pass (リンディス・パス)である。

ちょっと大雪(どんな表現だ!)が降ると、結構な確率で閉まってしまう事が多い峠だが、我ら南島の下の方に住む人間たちにとっては重要なパイプラインである。
この写真を撮った場所の足元には雪が残っていた。寒いわけである。革ジャンの下に着たユニクロで買ってきた薄いダウンジャケットがとても役に立っている。一刻も早くお風呂に入らねば! 二人は凍りついた体に鞭を打ち、一気に峠を下る。

峠の下は明らかに気温が違い、ぬるあったかくなった。いつもの何にもない茶色い平らな大地が広がっている直線道路を走ると、なんとその茶色い大地が綺麗な緑の大地に変わっていたのに驚いた。ようやく、この地でも放牧を始めたらしい。農家が本気になったのだろうか。こんな大乾燥地帯にこれだけ大きな範囲で芝を生やせるなんて、驚きである。しかももうう、半端ない数の牛たちが放たれていた。

そして、二人はOmaramaのいつものカフェの前にバイクを止めた。お腹も減ったしトイレも行きたい。二人は安心して店に向かおうとすると隣に停めてあったパジェロに乗り込もうとする二人の白人男の老人たちが話しかけてきた。「俺も昔は乗ってたんだ。」からいつものごとく会話が始まった。なぜか我々はお互い一人づつ相手をしていたのだが、どちらも会話が終わらない。

私が相手をしていた老人はなんでも昔、韓国に住んでいたことがあり、北朝鮮の人々とも交流が深くあり、彼らに非常に思いやりを持っていると言っていたのにはすごく驚かされ、しかも、彼の言うにはニュージーランドと北朝鮮の国際交流をどんどん広めていき、教育や経済などの支援、更には北朝鮮という国がいつか、いわゆる普通の国になれるよう信じていると言った。

国家間のいろんな問題は山積みだけれども、バイク仲間同士で繋がることができるならば、という可能性を信じているということだった。
いろんな人がいるものだ。

ついでに言うと、先日どっかのリンクで見たニュージーランド人5人が北朝鮮の国境をバイクで越えるというyoutube画像だったが、この老人の知人であると言っていた。なんでもその彼らはでも韓国に住んでいる人達らしい。
ふーん、である。

そんな立ち話でどうやら30分も経ってしまったみたいだ。すっかり時間が狂ってしまったが、すごい出会いをした気がした。そそくさと我慢してたトイレに駆け込み、あったかいランチを注文する。バンズが具に乗っかってるくらいの絶対に閉まらないフィッシュバーガーが出てきた。満腹。ここのカフェはお気に入りのひとつと言える。まさに砂漠の中のオアシスだ。


さ、お風呂だ。カフェの向かいにあるところである。前の晩にウェブで調べたら2人での使用の場合は一人 $40と意外と高いが、お湯の入れ替えを毎度しているということを考えると店側の負担は少なくないはずだ。この値段の設定もうなずける。

入浴料を払うと$45と言われて、え?となる。5月から値上げをしたとおばさんオーナーは言う。「あのー、昨夜ウェブでは$40って見たんだけど」と言うと、「アップデートしてないだけだから」と。まだこういう態度でビジネスをやっている人は少なくないのだろうなあ、この国。ちなみにTrip Advisorでは満足度トップである。

Kuzzyさんは「水戸黄門」と書いた手ぬぐいをしっかり持って来たくせにバスタオルを持ってきていなくて更に$5で借りている。どおりで荷物が少ないわけだった。

いやあ、熱い熱い。日本人だから熱いのじゃないとダメだよ、なんて言ったらこのおじさん、ガンガン薪をくべてくれて、ごゆっくり、なんて言いながら去って行ったのだが、我ら二人の体はあっという間に茹でたたらこみたいになった。

このお風呂、いわゆる桶に薪ストーブが入っている状態なので、熱効率が素晴らしくいい。丁寧な作りでデザインも感心するほど。燃えたすすはいったいどこへ行ってしまうのだろうか。ポンプで循環している水もどうなっているのかよくわからないがすごい。

ここはプライベートがしっかり守られていて、この盛り上げた土で一つ一つのブースが囲まれている。お互いは全く見えない構造になっているので、スッポンポンでも大丈夫。スペースもなかなかの大きさで大人5人くらいでも良さそうだ。

おすすめは冬の夜だそうだ。夜空を見上げながら入る風呂は最高だぞと、オーナーおじさん。なかなか冬にこの町に来るお客も多くないと思うが。

すっかりあったまった体で帰路につく。ホテホテになった体なのでいくらかあったかく感じた。午後の気温といくらか良くなった天気のおかげだ。でも手はやっぱりグリップヒーターの恩恵を得ている。「グリップヒーター使ってるの?」とKuzzyさんが聞くので「もちろん」と答える。

丁度、いつも通る度に一緒に撮りたいと思っていた彫刻の前でバイクを止めるとここで初めてKuzzyさんはグリップヒーターのスイッチを入れた。今の今迄あんなに寒く震えていたのに、スイッチ入れずに走っていただなんて。それがある存在を忘れていたとか。

満喫した初チョイ乗りとなった。






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