2014年8月3日日曜日

驚きのFranz Josef − 気ままにぐるりと2000km Part 1

2012年2月。
サドルバッグは両サイドともパンパン、一応防水バッグに包んだ数日分の衣類とスニーカーともろもろ、カッパはすぐに取り出せるようにと一番上に。バックレストに縛り付けた、さほど大きくもないカメラバックがどうも座り心地が悪いのだが、それは仕方ないこととした。

予定はQueenstownからPunakaiki (プナカイキ)へ。と言っても実はここまでは結構な距離だ。ざっと550kmはある。家を出る前に今日の宿を予約した。この村にいつか泊まってみたいと思っていたのだ。ずっと前に車でここを通ったときの夕日がすばらしくて、時間があったら是非泊まってみたいと思ったのがきっかけだ。


実際のところ天気予報が芳しくない。晴天下ライダーとしてはとても不本意なのだが、こればかりは防ぎ様が無い。なんせウェストコーストを通るってことはすなわちそういう事が大前提となる。さすがに連泊ツーリングとなると、そうそう晴天日だけの移動を選ぶ事も難しい。

Crown Rangeを登り始める。以外に空気が冷えている。嫌な前兆だ。グリップヒーターを途中から点けていたのだがいっこうにあったかくならない。どうやら断線しているようだ。つい先日にフルサービスをガレージで受けたばかりなのに、おそらくそのメンテのせいで断線させてしまったのだろう。

今日のこの天気と、これからの旅の長さを考えると絶対に必要だと思い、文句も申すという意味で急遽引き返し、バイク屋に直行した。当のガレージの兄ちゃんは「そんなところ触ってない」の一点張りで通した。まあ、証拠も確かにないんだけども、ガレージ出てきてから乗ってないんだけどなあ。

ぶつぶつ言いながらもどうしようもない事で時間をつぶす事はできない。そそくさ自分のうちに戻り、カチャカチャと配線修理を始めた。見事に引きちぎられていた。やっぱりあいつだ、と思う。ま、直ったので、気を取り直し、再出発とする。おかげで遅くなった。1時間以上のロスだ。

やっとCrown Rangeに戻り、直ったグリップヒーターのありがたさを感じながら、Wanakaに着いて中途半端にタンクに入っているガソリンを満タンにする。このSportsterのタンクは17リットルで大体200kmを超えたくらいで入れるようにしているのだが、燃費は平均20km/lなので、航続距離は大体300kmという事になる。そうするとFranz Josef (フランツ・ジョセフ)までは行けそうな計算だ。


前出のストーリーでおなじみのHaastを超え、海に当たると北へ海岸沿いに進む。原生林が激しい風で曲がりくねっているが、道はまっすぐだ。

一部、すぐ海沿いを走る場所がある。波が荒い時は道路上に容赦なく降り注ぐが、今回は大丈夫そうだ。しかし、しぶきなのか小雨なのか、シールドが濡れる。そこを過ぎてからもまだ濡れ続けるので、それが雨だと分かった。

元々無口だし、しゃべる相手もいないので、黙々と走り続ける。
過去にロケをした森の横を通り過ぎた時、あの日、結構降る雨の中、木々の大きな葉っぱを打つ雨音の下、みんなで黙って撮影してたことを思い出した。


今日のほぼ2/3地点の Franz Josef で給油した後、腹も満たそうと考える。手っ取り早くガソリンスタンドのお姉ちゃんから情報を得ると道路の反対側に最近出店しているタイ風料理のテイクアウェイがお気に入りと言う。よし、行ってみよう。

しかし、ここで、なんと、また一つ問題が発生した。ガソリン代金を払い終わり、イグニッションをまわすとイモビライザーがけたたましく鳴った。あわててキーを抜いてやり直すがまた一緒。周りの目をガンガン感じながら数度目に何とかエンジンがかかり、逃げるように4 Square スーパーマーケットに直行した。超コッパズカシイものである。
キーの電池を購入し交換すると、イモビライザーは鳴らなくなった。良くこんな田舎でボタン電池があったものだと感心した。あー、良かった。これからはちゃんと定期に電池交換をしようと思った。

気を取り直し、タイ屋台に行ってみる。キャンピングカーを改造したお店だ。
異常に値段が高い気く量が少ない気がしたが、空腹には変えられない。オーナーはアジアのお姉さんと現地のおじさんのカップルらしい。

私のどこから見てもバイク乗りのかっこに気づいたおじさんが話しかけてきた。おじさんもハーレー乗りになるらしく、友達と一緒に今度の夏にはアメリカに行ってハーレー買って、さんざん周遊した後にそれを持って帰って来るという計画があるんだと教えてくれた。それは楽しそうである。ドルも当時はすごくいいレートだった。

しかし、そのタイ風のチャーハンらしき食べ物はアジア人のお姉さんが作っていたにもかかわらず、お世辞にもおいしいとは言えなくて、腹もふくれず、ぼられた感満載だった。おじさんのハーレーの旅の夢を叶える為に寄付したとしよう。なんでだ!?

すぐ横にあるシルバーのステンレスむき出しみたいな壁の公衆トイレに入ってみると、自動ドアで迎えられ、すると音声でも説明が。「これから5分間、自由にお使い頂けます。」的なことを言ったかと思うと、銀行で流れているような爽やか系の音楽が流れる。

とてもハイテクだが、5分経ったら何をしている状況でも勝手にドアが開いてしまうのだろうかと、心配した。果たして、そうだろうか。残念だがそれを試すほど私には時間がかからなかった。

ずっと大粒の激しい雨という事でもなく、革の上下を着ているがカッパを着るまでもない。雨は時折強弱をつけながらいろんなバリエーションで楽しましてくれるなどの気の効かせ様。しかも、すっかり止んで体が乾きそうになると、また雨雲が手招きして待ってくれていたり、完璧なおもてなしを受けた。しかし雨は森を過ぎると上がって、残りの3時間はドライの状態で走れた。


Franz Josefより約3時間の道程で本日目的地の、Punakaikiに到着。
太古からある森が海に接している隙間にある村で、観光地であるPancake Rocks (パンケーキ・ロックス)という潮吹き穴がある所からごくすぐ近所だ。ゆったりと流れる川が海に繋がっているところでカヤックを楽しんだりする人もいる。


久々にバックパッカー宿である。ワーキングホリデーにバックパック一つで旅をしていた時代を思い出すと、わくわくする。しかし、いい歳のおじさんになったので、いくらか出世して個室をリザーブ。というか、2段ベッドが1つあった部屋なのだが、その晩は他に客がいなく、結果的に個室になった。少ない金額で個室をゲット。
今日初めての「当たり!」気分を味わう。

散歩に出た。村の大きさはほんとに小さく、5分も歩けば一周してしまうだろう。

村の入り口の看板のように突き出た岩が面白い。
アガパンサスという花、なぜかとっても心が引かれる。うちの庭にもこれのミニ版が夏に咲く。紫と白と、手のひらサイズの花だ。でもこの大きいのがやっぱり見栄えがいい。


キャンプ場はにぎわっていた。今度は家族でここでもいいだろう。時期により人が多くなりそうだが、心地が良さそうなところだ。


ビーチはなんにも言わずに歩いた。尤も一人だが。
残念ながら望んでいたような夕日にはならなかったが、これはこれでいいものが見れたと思った。








ぐるりとした後、どうやら村に一件しかないとわかると、このバーレストランに入る。
一件しかないだけあって、非常に混んでいて活気がある。しかし一人なので席も困らない。


カウンターに座るとでSpeights (スペイツ)のジャグと無難なハンバーガーをオーダー。このスペイツというビールは「南の誇り」という相性で慕われていて、私のかつて愛飲したビールで、最盛期は水の変わりに飲んでいたようなものだ。南島のこの気候にとにかく合う。現在も冬の間はこれにしている。それ以外の気温の高い時期にはSteinlager PURE (ステインラガー・ピュア)になった。好みも変わるという事か。
ということで、今夜は一人で祝杯をあげる。





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