2014年8月25日月曜日

ひとり、水力と風力と

2010年11月の事。


見事な晴れのちょっと風の強かった日だ。
東に行きたいって思った。西からの追い風に乗る魂胆だ。ヨットみたいに風の力を借りるのだ。

すいすいと快適に走れるように風は背中を押してれた。100km/h巡航だがほとんど無風状態に感じる。ちょっとスピードを緩めると更に風は感じなくなった。これぐらいがちょうどいい。

エンジンもパタパタと聞こえるくらいの速度で走るとまるでブランコで小さく揺れている時に感じる感覚と似ていて、きっと脳にはα波が出まくってるのではないかと思う。癒しの走りだ。

そうして渓谷に沿って走りCromwell (クロムウェル)に着くと橋を渡りT字路にぶつかると真っ青なLake Dunstan (レイク・ダンスタン) を左手に見てTarras (タラス)という村を通る。何にもない所なのに、最近なぜだか急におしゃれになって来ている所だ。

その後は有名なLindis Pass (リンディス・パス)という峠を抜けた後、まっすぐな道を何キロか走るとOmarama (オマラマ)に着く。ここまで大体2時間だ。お気に入りのカフェで一息ランチとする。週末はハイカーが多い。殆んどが家族連れだ。

私は妻子を家に置いて一人で抜け駆けして出てくるのはやっぱり何となく気が引けているのだが、でも出て来ちゃったら自分の為に楽しまないと後悔は大きくなるばかりである。そんな事を考えながらコーヒーをすする。


簡単にランチを済ますとコースを考えた。このまま来た道をまっすぐ帰らないで、ちょっと奥まで行ってみたい。Lake Aveimore (レイク・アヴェイモア)という人工湖があるのだがそこに行ってみたくなった。この辺りもやはり水力発電の為に、たくさんそういう湖があるのだ。

そう、ここは水力発電が主体の国。だんだん地熱や風力が力をつけて来ていて割合が変わっているが未だに全国の電力の75%を天然資源で賄っている。ここ、南島に限っていえば9割以上が水力発電である。風力もあるがまだまだ少ない。

オマラマから出る83号線を南東に走る。すぐに一つ目の湖、Lake Benmore (レイク・ベンモア)がある。もちろんここも人工湖。青い水とファームの緑が眩しい。丘の上は農地も無いので手付かずの茶色い山々が続く。

レイク・アヴェイモアに着いた。

水面が近い。ものすごい強烈な眩しさを感じた。そのエメラルドのブルーなのかグリーンなのか光の方向で色が違って見える。

置いてきた家族に自慢しようと珍しく自分で記念写真を撮ろうとカメラを塀に置く。セルフで撮るのだが10秒のタイミングがなかなか合わない。何度かやっていると遠くから歩いてきたカップルがその一部始終を見ていたらしく、「撮りましょうか」と言ってくれたのだけど、コッパズカシクて遠慮した。

普通誰かにそういう場所で撮ってもらう時は顔をカメラに向けて撮ってもらうのだろうけど、「後ろ向きでかっこ良く撮ってください」って、言えない。そのカップルが遠ざかって見えなくなるのを確認してから、一人上手に徹する事にした。
で、結果がこれ。足があと10cmいや、5cmでも長ければ人生いろいろと明るかっただろうになあと過去を振り返る。

この湖を左回りにぐるりと回る事にした。ダムを渡ってからは道がぐっと狭くなる。例によってパタパタとした音でα波を出しながらゆっくりと走る。所々にキャンプ場があってとてもいいなあと思わせる環境になっている。緑の芝が広がる所に程よい高さの木々がたくさんある。

ファミリーがモーターボートでドーナツ(バナナボートみたいなやつ)を引っ張って遊んでいる。子供達のはしゃぎ声が止まらない。きっと彼はすごくいいお父さんなんだな、金持ちだし。と、更に自己嫌悪に陥ってしまう。



アヴェイモアとベンモアの湖同士の仕切りになるダムへ着くとその大きさにびっくりした。うちが毎月払っている電力会社の持ち物であるらしい。年に何度か掛かってくる電話や軒先訪問で違う電力会社の人が「絶対うちの方が安いから、うちに変えてくれ」と意気込んで来るがうちは相当にいいレートをもらっているせいか、新参者が歯が立たないでいるようだ。しかしながら、電話会社もそうだが、この競争の少ない国でこういう競争があるのは健全な事でいいと思う。

さて、帰り道。同じ道を帰る。これはしょうがない。ずっと向かい風だ。体が重い。風の力も偉大である。こんな風もあるのだから風力発電だってもっともっと行けるはず。考えさせられる旅となった。



今日一日、家族は何をしていたのだろうか。帰ったら聞いてみよう。
きっと私の土産話より面白いだろう。




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