2015年3月7日土曜日

暑い夜。

2015年2月。ツーリング4日目。

昨日と同じようにいつも通りの生活の友人のうちに別れと別れを告げて、子供達が学校に行く時間に私も一緒に出る。

天気はいい。超快晴。気分も最高だ。雨を避けてここに来た甲斐が非常にあったし、懐かしい顔と会えたし、充実した時間を過ごさせてもらった。よくよく考えると彼らとは年末に会ったのだったが、その時は一瞬だったので、今回は色々と良かった。勝手に訪れておいて、全くいい言い草である、と自分でも思う。

先日に通って来た道をそのまま戻るのは実はそんなに好きではないのだが、この快晴なので、そんなに気にならなかったし、ゆっくりと走れたし、度々止まってはカメラを取り出した。

バッテリーを上げてしまったMurchison (マーチソン)で今夜の宿をどこかに取ろうとあちこちチャレンジするが、Franz Josef (フランツ・ジョセフ)や Fox Glacier (フォックス・グレーシャー)の両方ともめちゃ混みで全くベッドがないらしい。慌てた。

こっから丸一日かけて帰ることもできなくもないが、900kmはちと辛い。それにこの快晴、写真を撮りたい放題でそれを棒に降らなくてはならないのはあまりにもつまらない。
しょうがなく、距離を縮めてGreymouth (グレイマウス)に的を定めた。モーターパークはがらすか空いている感じらしい。

移動距離がぐっと縮まり、時間に余裕ができたのでじっと地図を見る。
今回Arthurs Passを通ったので、このハーレーでほぼ、南島の端から端と、真ん中を通り抜けたことになるが、まだ一箇所、行ったことがないのがKaramea (カラメア)だ。Westport (ウエスト・ポート)から95km北上する道で行き止まりである。いつか行ってみたいと思っている場所であるのだが、どうやら今日がそのチャンスかもしれない。

Buller River (ブラー・リバー)沿いをずっと東から西に走る。今日は非常に美しい。何度も今まで通ったことがある場所だが、いつも曇りか雨であった気がするので、よく景色も見られなかったのだ。



 すんごい大きいヘアピンが川に沿っている。写真はパノラマで撮っているので変な風に見えるかもしれないけども、本当にこんな感じなのだ。しかも崖をえぐって道が作ってあり、くぐり抜けていくのだ。その部分はおそらく数百メートルあるのだが、ここは一車線なので、向こう側から車が来ないかどうかよーく見てから侵入しなくてはならない。途中ではち会うと、行き違うスペースがないので、どっちかがずっとバックしなくてはならないので大変だ。

その入り口で写真を撮ってると反対側からHondaがやってきて私の隣に停めた。「今日はあっついな!」とヘルメットを脱ぐと気さくに声をかけてきた。私とは反対回りをしているらしい。Queenstownから2時間離れているOmaramaに住んでいるらしいが、その距離にもかかわらず、私を「隣人」と呼んだのはおじさんのテリトリーの広さがわかる。

今までどこをどうやってきて、これからどうするのかとお互いの情報交換をする。Karameaに昨日泊まっていたとおじさんが言うと、ちょっと運命を感じた。やっぱり行くべきなのだ。おじさんも道があんまり良くないけど、行ったことないならば、行ってみたらいいよ、と勧めた。

我らがそうして話している間にさっき私とすれ違ったメチャッパヤのYamahaのレーサーが戻ってきた。彼は手を上げて挨拶する暇もなさそうだ。ものすごい甲高いエギゾーストと共に一瞬でそのカーブを抜けていった。きっといつもここを走っている人なのだろう。おじさんもここまで来るときに後ろからロケットが来たと言ってたので、ずっと行ったり来たりしている人なんだろう。

その様相を見たおじさんと私はお互い気をつけようねと行って別れた。

ずっとこの川沿いを走るが、ずっと似た景色なので意外にちょっと飽きた。


Westport (ウエスト・ポート)に着いた。何度か来ている町だったが、なぜか違う印象を受けた。確かにあんまり散策していなかったのかもしれないが、まるで始めて来たように感じるほど何も覚えていなかった。田舎っぽい時間ハズレのカフェでランチをする。レッドタイカレーとミルクシェークなどを頼んでしまう。冴えないカフェのおじさんは結構する値段のランチのレジを打ってキッチンに消えた。全くハズレだなあ、なんて思っていると、ミルクシェークを持ってきてくれたのは可愛い女子だった。娘さんなのかな。カフェのおじさん、うまい商売の方法を知らなさそうだ。


町を一通り歩いて見てからバイクにガソリンを入れた。いよいよKarameaに向かって行ってみるのである。

町を出るとしばらくずっとストレートだ。長い長い。向こう側にカゲロウが出ている感じだ。しかし気になるのは上空の雲だ。いつの間にか、グレーの雲が行き先を覆っている。うーむ。軟弱なライダーとしては避けなければならない。急に速度を落とし、行くか行くまいか頭の中で戦うが、軟弱が大勝したので、直ちに引き返した。

諦めと頭の切り替えは早い方である。
また人生を感じた時に行けばいいやと自分を納得させる。今日はその日じゃないと。

昨日世話になった友人が以前Westportの海岸線を走ったらよかったと言っていたのを思い出して、そっち方面に舵を切った。海岸線は綺麗だった。どうやらそれなりに見所があるらしく灯台の看板が出ていたので行ってみた。


遊歩道があり、大したことのない灯台の立っている丘を汗だくになりながら登った。もちろん今日も革ジャン革パンツ。例によって革ジャンは脱いでそのままバイクに置いて歩いたが、あっつい!

がけは見所があったと、割と満足して後にした。
なんせ時間がありありなのだ、今日は早く宿に入ってスパとかに浸かっちゃおうかな、なんて考えながら国道に戻る道を行くと、目の前に迫る暗黒の空。嫌な予感だ。

さすがWestcoastだ。これが実力。
どんどん私の影は薄くなっていった。
ところが、その心配は必要なかったようである。雲に近づくにつれだんだん暗くなっていくのだが、道は右に急角度で曲がり、そのままうす曇りの沿岸線へと続いた。

しばらく行くと、目の前のビーチにある大きな岩のど真ん中が割れていて、その向こう側が見えるのだ。この道は何度も通っていて、ついこの年末、家族を連れて車を運転していたときにも見落としていたものだった。満潮だったのだろうか。これは行くしかない!

駐車スペースには数台のキャンパーバンを含む車が止まっていて、様々に人々はビーチを楽しんでいた。
目の前に流れている川はFox Riverというらしい。別に目立つものでもないのでいつもすっと通り過ぎていたのだろう。

私は革の上下を脱ぎ、持っていた短パンに着替え、ビーチサンダルを引っ掛け、膝くらいまでの浅い川を渡って行った。

その大きな岩は見事に不思議に通り抜けられた。洞窟の向こう側には芝生が引いてあり、誰かの家が3件ほど建っている。「えー‼︎」という感じだ。行ってみればこの岩はその人の家のすぐ反対側にあるのだ。洞窟の岩が。

しかもこの洞窟は中でT字になっており、海に向かってぽかっと開いている。天気が良かったらすっごくすっごくすごかったろうと、想像した。


そんなことに感心しながらビーチを歩いていると二人の男がゴルフクラブを持って歩いていている。砂浜でゴルフをしているのだ。ちなみにホールは先ほどのあのでかい洞窟の穴であると言っている。それならとっても入りやすいだろう。
聞くと、すぐそこの緑の家に住んでいるんだよと。なるほど。


足を乾かして砂を払ってから着替えて、出発した。

その後、NZで1,2の座を争うのではないかと言われている美しいコーストラインを走る。ほとんどがタイトなコーナーで決して走りやすくはないのだが、ため息が出るほど景観がものすごい。私もめちゃくちゃファンである。天気が悪くてもそれなりにいいのがNZのいいところ。


浜辺でサーフィンの体験だろうか、初心者っぽい人が講習を受けているのが見えた。Punakaiki (プナカイキ) に着いたのだ。

いつでもここでは有名なブローホールを見に行くのだが、今日はその手前に看板が立っているのに気がついた。今日はよく気がつく。やはり時間の余裕があると行動が違う。

洞窟探検ができるところがあるのだ。バイクを止めて歩いていく。真っ暗で何も見えないと若い女の子二人が出てきた。私はiPhoneのライトとツルツル滑る石の上を歩くためようにできていないブーツで奥まで入っていった。それでも何にも見えなかったが。でも割と大きな洞窟にびっくり。ここも何度も知らずに通り過ぎていたのだ。


Greymouthだ。宿は海沿いのモーターパーク。町まで遠く不便ではあるが、しょうがない。一人部屋を頼んでおいたのだが、渡された鍵の部屋に行くとベッドがトータル7人分ある。ダブルが一つ、シングルが一つ、そして2段ベッドが二つある。果たしてどのベッドで寝たらいいのだろうか。

それ以外にはテーブルと椅子が4脚。壁は両側ともブロックで奥の壁は石膏ボード。入り口は全面ガラスだが、開くのは入り口のスライドドアだけ。まるで倉庫みたいな作りだ。安いのはいいのだが。それにしても、、、である。

そのガラスの部分が西に面しているため、部屋の中が暑い。窓をというか、ドアをずっと開けっ放しにしておいていくらか冷やそうとしなくてはならないが、出かけるのにこれじゃセキュリティも何もない。しょうがない。


ご飯の時間だ。町まで走って5分くらい。あちこち回ってみてみるが、どこも開いているのか閉まっているのかよくわからない店ばかり。この町の規模の金曜の夜にしては人通りも車通りも少ない。

Westcoastで有名なエールハウスには行かないで遠く離れたOtagoの老舗のエールハウスに入ったのはここは以前に来たことがあって美味しいと思ったからだった。今日も美味しかった。地味な町の割にいいシェフがいるに違いない。


もうじきサンセットの時間だと、宿の隣のビーチに直行すると夕焼けがすごいことになっていて、浜辺にはおそらく50人近くの人がいたと思う。明らかにバーより多い人数だ。

みんなそれぞれに考え事をしながら夕日を眺めているようだった。ただそれだけで、十分なシーンだったのだ。

私もそれに参加したが、やはりその場には私一人だけ黒革ジャンに黒パンツにブーツで浮いていた。

今日はよく眠れそうだ、と思ったのだが、帰るとやはり部屋の中が暑い。
ドアは開けっぱなしで寝ることにした。やはり部屋には窓がある方がいい。



まだつづく。



0 件のコメント:

コメントを投稿