2014年12月21日日曜日

とてもアメリカンな彼女

久々に乗る。
一日中ぐずついた日曜日だったが、夕方になって晴れてきて青い空が見えてきた。雲の姿とその数のバランスが良く、ひょっとしたら夕焼けがすごいことになりそうだと予感がしてきた。

小さな子供のいる家庭は、いつものごとく早い時間の夕飯を済まし、テレビはクリスマスを題材にした番組が勢ぞろい、なにやらサンタのアニメを見ている。
チャンスは今だ。

どうせ、この時間、そんなに長く乗ることはないし、夕焼けを見たいだけだ。
「ちょっと行ってくると」奥さんに声をかけ、革ジャンを引っ掛け家を出てくる。

街の中のおそらく一番眺めのいい道路を走ろうと、そちらへ向かう。
さすがにちょっと空気が冷えてきている。スピードを出さなければ寒さは感じないのだろうくらい気温は高いはずだ。

どこの国でもそうなのか、高い所には大きい家が立ち並び、どの家も贅沢な作りの立派なものである。上に行くほどその条件は加速するようで、一番上にある家が一番でかい。

なぜかその一角に手付かずの土地があり、まるで見晴台になっており、そこが暗黙の了解で庶民の憩いの場となっている感じである。観光客をガイドする車もそこでクイックストップしてみんなを「おおぅ」って言わせている。

そこにSportsterを停めた。


荘厳な太陽を見つめると心が洗われる気がする。
しばらく一人でいい時間を過ごしたのもつかの間、似たようなことを考える人はこの小さな町にもいるようで、ヘッドホンをしたTシャツねーちゃんも太陽を見つめながら散歩しながら近くを通った。

その彼女が声をかけてきた。最初は私もヘルメットの中で鈴木雅之が歌っていたためなんて言ったのかわからなかったのだが、何かを喋りかけてきたのは聞こえたので、ヘルメットを脱いだ。



見ると、知った顔だった。ほんのちょっと前に知り合った彼女はアメリカ人。よく喋る人だなあと思ったものだが、やっぱりよく喋るのだ。
向こうもヘルメットを脱いだ私がその時の私だということに気がつくと驚いた。

彼女は「これは、なんていうバイクなの?」と問いかけてきた。
同じ質問を良く素人にされるので、同じように「これは、ハーレーダビッドソン」と言うと、一拍おいて
「そうよね、これ、ハーレーよねえ」と。

そして、その次の彼女の言葉に私は耳を疑った。

「実は私の実父がSoftailをデザインして作ってHarley Davidsonに売った二人のうちの一人なのよ。」と‼︎

"You must be kidding!!" ショックだった。

信じられないが、きっと本当のことなのだろう。そんなことで嘘をついて一体何の得があろう。

彼女がすぐにハーレーとわからなかったわけはここにある。これはSportsterだ。はるかにちっちゃいのだ。言ってみれば、「これでもハーレーなの?」ということであるのかもしれない。

というわけで、私の態度は豹変し、記念に写真を撮らせてもらった。

バイクには乗らないのかとの私の問いに、今まですごくたくさんのライダーたちを見てきて、いろんな事故を見過ぎてしまって、怖くなって乗らなくなったと。

でも若い頃にはDucatiのセクシーさには勝てなくてレース場でぐるぐる回ってたわ、と。

なるほど。

ついこの間は、この町で見かけたマセラティに大興奮して、あれが私の将来の車だわ、と思っていると語っていらっしゃいました。ランボじゃダメらしいです。(実はこの町にあるランボやフェラーリが試乗できるアクティビティーがあって、広告のためそれらが良く町中に停まってる。)

なるほど。

アメリカ人だよね、君。
お父さん、ソフテイル作った人だよねえ。

ふーん。
アメリカンな彼女はイタリアン好きだったみたいだ。


日が暮れてきた。



じゃあ、また今度、と言ってその場を去った。
彼女もさっきよりもずっと気温の落ちた中、元気にTシャツ一枚で坂を下って行った。
いろいろ納得。



遅くなった。5分でうちに着く距離だが。
そういえばヘッドライトが暗かったのでPIAAのバルブを入れてみた。前に入っていたものと比べると随分白い。夜を走ってどのくらい明るくなったのか確かめてみたいのだが、でも、必要がないのなら走らないほうがいいな。

家に着いた9:22で空はまだ明るい。
そうだ、今日は夏至なのだ。
明日から1分ずつ、日が短くなっていくのだ。
夏はまだまだこれからなんだが、なんか、寂しい。



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